ぽてぽてさん

皆さんはベタベタさんとか送り狼とかパタパタさんなどの話を聞いたことはあるだろうか。
地域によって呼び方が変わったり撃退方法が変わったり扱いが変わるのだが私の地域にもそういうものがある。

母方の曾祖父母も父方の曾祖父母も元気なのだが今回は母方の曾祖母から教えて貰った話。

曾祖母が「ぽてぽてさん」なる存在について話してくれたのは曾祖父母の畑の野菜の収穫を手伝った後の休憩時間である。

ある日、曾祖母は独りで夕暮れの田んぼの横を歩いていた。当時はまだ村といった規模なので今より畑も田んぼも多い。すると後ろから「ぽてぽて……ぽてぽて」となにかが着いてくる。
振り向いても誰もいない。これはよく聞く話だが、歩きながら振り向いた時と止まった振り向いた時で対応が変わるらしい。
止まって振り向くとぽてぽてさんは人間の後ろに急いでぽてぽてぽてぽて移動する。
また振り向いてもぽてぽてぽてぽて逆サイドに、必ず人間の背中側を陣取ろうとする。

歩きながら振り向くと、ぽてぽて音は止むのだが、止まる前に足だけが見えるらしい。
2回目、同じように歩きながら振り向くと手だけが、3回目は背中らしき部分だけが見えるのだとか。

4回振り向くとどうなるか聞くと「ぽてぽてさんはね、恥ずかしがり屋さんだからぽてぽて走りながら逃げちゃうの。その時、真っ白い身体が見えるのよ。」
と曾祖母は言っていた。

この時、立ち止まって振り向いた回数はカウントせず、あくまで歩きながら振り向いた回数を数えるのだとか。曾祖母曰く、「もしかしたら歩きながら振り向くと、不意打ち気味になるから慌てて姿を消すのかもねぇ〜。」との事。
たしかにそれはありそうっちゃありそう。

また、ぽてぽてさんの特徴として、4回目の振り向きがない限り対象を追尾してくるらしい。しかし家の中までは入り込まず、追いかけていた人がまた家の外に出ると着いてくるのだそうだ。

さて、実際にぽてぽてさんに遭遇した曾祖母だが、もちろんどうすればぽてぽてさんが逃げるのか知っていた。
しかしこうも考えた。「なにかに反射させて見れば正体が見えるのでは無いかと。」しかも憐れぽてぽてさん、思いついてテンションが上がり、草履でダッシュした曾祖母をしっかり追尾したらしい。ぽてぽて音がﾎﾟﾃﾎﾟﾃﾎﾟﾃﾎﾟﾃぐらいには早くなったそうな。わからん。

そして家に帰った曾祖母はなにか鏡のようなものを探した。当時は手鏡なんてないだろうと思ったらどうやら姿見サイズよりも手鏡の方があったらしい。(18世紀頃に手鏡が来日したそうな)

それを持って再び家の外に出た曾祖母はまず試しに歩いている最中鏡を見てみた。しかし何も映らない。続いて歩きながら振り向く時に、鏡を見てみた。しかし、後ろに急いで回り込むぽてぽてさんが映る訳でもない。

ここで曾祖母思いついた。その場でクルクル回り出したのである。

それも2パターン。1回目は自身がクルクル回り、２回目は物の周りを走るように回ったのである。
1回目、ぽてぽてさんは歩いていないみたいだが、２回目クルクル回る曾祖母を追いかけてﾎﾟﾃﾎﾟﾃﾎﾟﾃﾎﾟﾃ音が確かにする。
ここぞとばかりに鏡を見たところで少し体のバランスが崩れステンと転けたらしい。

これが4回目の振り向き判定になったのかは不明だが、ぽてぽてさんは逃げてしまったそうな。
しかし、曾祖母はしっかりとその姿を見たそう。

「ぽてぽてさんはね、うさぎさんに似てるの。長くて白い足と手でうさぎさんみたいに跳ねて逃げてったのよ。お顔はよくみえなかったけどコケた時お目目が赤いのが見えたからうさぎさんかなと思ったの。」

なるほど確かに外見の特徴は白いうさぎの想像図のままである。そして着いてくる足跡のテンポもうさぎっぽいっちゃうさぎっぽい。

意外とこういうものの正体はイタズラ好きな動物なのかなと思いっていたら「でも、なんだかうさぎさんの真似をしているこどもっぽい気もしたわね」と言っていた。
「全身真っ白で目の赤い人型の存在」が後ろを追尾してくるとか何気に怖いから、うさぎであると信じたい。