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呪い・祟り

白と黒の旅人さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

戦争で使われた軍刀
短編 2023/06/06 21:59 2,576view
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私の父方の祖父母のうち、祖母の姉…大叔母というのだろうか。その人は生家をそのまま継ぎ、家の管理、曾祖父母の世話を子どもと一緒にしていたので曾祖父母に会いに行く時は顔を合わせていた。

問題の軍刀は模造刀の大小の刀、本物か偽物かは分からない鎧兜、これまた模造の十文字槍と一緒に飾られていた。

この軍刀はそれなりに前のもので日露戦争の時に使われた。
その軍刀の刀身と鍔の間というか、接続部分に黒だか、茶色だかのシミがついている。
100を超えた曾祖父が言うには「これは日露でやりあった時、俺の親父が持ってたもんだ。後に2次大戦の時も運良く弟の命と一緒に帰ってきたし、そのままGHQに回収されずに残ったんだ。」

曾祖父の親父さんは日露の時まだ20代後半とかだったよう。そして、2次大戦当時、弟さんと一緒に帰ってきたということは弟さんは比較的大戦初期に徴兵されその後戻ってきたのだろう。
その弟さんは既に先立っており、左手の小指から中指にかけてと左足の膝から下を失っていた。

「親父はな、戦争の時、相手の兵士をこれで斬ったんだ。でも、こう言ったんだ。「この刀はいざ斬るという時斬れ味が悪くなる。だから、何回も何回も鈍器みたいにして使った」って。弟はな、これで人を斬ることは無かったんだ。こいつを使う前に爆撃だかで左半身をやられて戻ってきたからな。」

曾祖父の父が亡くなり、刀の手入れを曾祖父の弟が行っていたがこれまた怪我で手入れの出来なくなった刀を曾祖父は手入れしていたんだと。

「この軍刀はな、多分親父が斬ったロシア兵の怨みが憑いてるんだと思うんだ。親父はずっと言ってたんだ。「恐らく、やめてくれ、やめてくれと叫ぶロシア兵を俺はこの刀で滅多切りにした。でも切れなかった。だから何度も何度も刀を振り下ろしたんだ。だからそうとう恨まれたと思う。」ってな。親父はその後、病気で苦しみながら逝ったよ。」

人を斬った刀。刀とは本来そういう使い方なのだが、斬っても切れない刀とはなんなのだろうか。
確かめようにも刀を作った人はとうにこの世にいない。百聞は一見にしかずということで実際に刀を見せて貰った。

見せてもらうと言っても手入れしている所を見せてもらっただけなのだが。
特に何か見えるとか言うわけでもなかった。

特にきらびやかな飾りというものもなく、本当に一兵卒の兵士に持たせる刀って感じ。

ここからは私の勝手な考察のようなものなのだが、軍刀ということはまず間違いなく戦争で使われる。学校で習ったように当時帝国主義などを掲げていた日本はこの刀が作られた後に大きな戦争に参加しただろう。

その時、古くから武士などに頼まれ名刀と呼ばれた刀を打っていた人からすれば量産性と実用性を重視した刀はどのように映ったのだろうか。もしその刀造りに芸術的な意識で、作り上げた刀が人を斬ることを望んでいなかったのならその刀は人を斬る時、どうなのだろうか。

結局、それ以上のことは分からず、曾祖父も100歳を超えた頃に記憶が曖昧になったため、曾祖父から追加の話を聞くことは出来なくなってしまった。

日露戦争以前に作られたこの軍刀は作られて100年以上経つ。100年というのはひとつの道具が九十九神へと至る年月とされている。
斬られたロシア兵は何を思ったのか、一度も人を着ることがなかった弟さんは何があったのか。人を斬った曽祖父の父は死の間際に何を想ったのか。

今ではこの軍刀は大叔母の子ども達が手入れの仕方をちゃんと刀剣の管理や手入れに詳しい人に教えて貰っている。
この刀を私が手入れすることはあるのだろうか。

何はともあれ、こうして残っているのだからいつか私達の手元を離れても大切に扱って欲しいと思う。

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コメント(5)
  • 知り合いの神主一家にお祓いをしても駄目ですか?

    2023/06/06/22:24
  • 刀剣博物館が代々木にあった頃(今は両国に移転しましたが)行ったことがあるのですが、視える友人が、入口に入るや否や『ちょっとここ、落ち武者が何人もいる!怖くて入れない』と言って、入口で引き返した事がありました。
    展示品は武士の身分を誇示するため1度も人を斬る事が無かった宝剣もあれば、綺麗に手入れをされていても人を斬った刀もありました。やはり人を殺す道具なので、残留思念は数百年経っても消えない、という事なのでしょうね。
    妖刀村正などは持つ人を不幸にする、という逸話もありますし。

    2023/06/06/23:36
  • 供養して頂き手放した方がいいのでは?

    2023/06/07/00:22
  • ↑恨みつらみとかが残ってるなら多分私以外の誰かが私が見るより前に気づいてもおかしくないんですよねぇ。とくに幼少の頃の子どもなんかはそれこそ鋭いでしょうし。
    仮に何か憑いていたとしても、曽祖父の親父さんを引っ張ってったから満足したのかもしれませんね。
    とは言っても、物品に憑くタイプのやつが1人道連れにしただけで満足するとも思えないのも事実です。

    2023/06/07/10:50
  • ↑妖刀村正は人を不幸にすると言う逸話もあるんですね。
    興味深い。

    2023/06/09/11:13

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