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ヒトコワ

とくのしんさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

欺瞞に満ちた家族
長編 2024/04/01 10:05 7,796view
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今から20年程前に実際にあった話。自分のなかで気持ちの整理がついたので書き残す。

当時、私が大学生2年生の夏に実家が火事にあった。大学で講義を受けていたところ、地元のフリーターの友人から「真美の実家が燃えてる」と連絡を受けた。
講義を抜け出し急ぎ母に連絡をすると、近所のスーパーで買い物をしている途中で、火事については知らない様子。ただ、先程から消防車数台のサイレンが聞こえるから、急いで戻ってみると言って電話を切った。

講義が終わったあとに「家が火事みたいで」と友達に伝えて急いで帰宅することに。大学から家までは自転車で20分。自転車に乗って10分も走ると、実家の方向から黒い煙が上がっているのが見えた。何かの間違いであって欲しいと願うのも虚しく、実家は燃え盛る炎に包まれていた。

呆然とする私を母が見つけ駆け寄ってきた。母の無事を確認し、私は泣いた。
「お父さんもお姉ちゃんも仕事に行って無事。おじいちゃんの無事がまだ確認できないけど、多分いつものパチンコ屋さんに行ってると思う」
私の手を握る母の手は震えていた。

消防士さんたちの懸命な消火活動の甲斐あって、隣家へ火が広がることはなく鎮火した。早退してきた父と姉が、そして安否がわからなかった祖父がパチンコ屋から戻ってきたときに彼らを迎えたのは、無残にも黒く焼け焦げた実家の変わり果てた姿であった。その光景に私たち家族はただただ茫然とするしかなかった。

「この後どうしようか・・・」
ひとまず警察と消防の方から、完全に鎮火したことを確認したうえで現場検証を行うことを説明され、それが翌日以降になると言われたが、完全に焼失した実家に寝泊まりできるはずもない。生憎、近くに頼れる親戚はおらず自力でなんとかする他なかった。最低限の着替えやらを購入して、その日は駅前のビジネスホテルに一泊することにした。

こんなことになっちゃったけれど家族みんな無事だったことを不幸中の幸いとして喜んだ。家は無くなったけど家族がいる。たくさんの思い出が詰まった家が無くなっても大事な家族がいることで私は前向きになれた。決して強がりじゃなくて本当に家族の存在が支えに思えた。このときまでは心からそう思っていたのに・・・どうしてあんなことになっちゃんだろう・・・。

次の日、消防と合同で現場検証を行った警察から連絡があった。検証した結果、放火の可能性が高く、台所付近が特に損傷が激しいことから、ガソリンのようなものを撒かれたのではないかと言う。さらに警察官が続けた。
焼け跡から少なくとも4人の身元不明の白骨体が出てきたと。居間の床下から出てきたが、いずれも損傷が激しく、現状では性別の区別もつかないほどだというのだ。
家族一同にとって、床下から身元不明の白骨体が4体も見つかったという事実は、家が火事になったこと以上に青天の霹靂だった。

私たちはそれぞれ一人一人取り調べられることになり、火事が起きたときにどこで何をしていたかとか、白骨体に心当たりがないかなどを聞かれた。私は本当に何も知らなかったし、何もわからなかった。ありのままを話したけど、それを信じてもらえるのかどうかという恐怖を感じたのを覚えている。それ以上にこの件に家族が関わっていないか、何かに巻き込まれていないかという心配が過った。

そんな件があって近所では私たち家族が、何か事件を起こしたとか噂話が絶えなくなった。周囲に奇異な目で見られることもあって、父は少し離れた場所にマンションを借りること。相変わらず警察からは話を聞かれることは多かったが、やっと落ち着ける場所を得て私たちは安堵することができた。最低限の家具や生活用品を揃えたり、実際に落ち着くまでに1か月程を要したが、ようやく生活に落ち着きを取り戻すことができたのである。

いつもの日常が戻った頃、私は警察に呼ばれた。警察に行くことになったのは火事の翌日、白骨体が出てきた件以来だったから少し緊張した。警察に赴くと担当刑事さんが丁重に出迎えてくれた。私の緊張を察してか、担当刑事さんは世間話を始め、自身の話などを交えながら調子どう?困っていることはない?といった会話で場を和ませてくれた。私も少しフランク気味に受け答えしながらいると、刑事さんは少し表情を強張らせながら家族について尋ねてきた。

『お父さんは何をしている人?
お母さんはどんな人?
お姉さんは?

おじいさんは?』

矢継ぎ早に質問された。
一つ一つ答えていたんだけど、もしかして家族の誰かが疑われている?と思わざる程の質問の数々に不安が募る。一通りの質問が終わったのか刑事さんが一呼吸おいて、私に衝撃の真実を打ち明け始めた。

「あなたの家で見つかった白骨体は全部で4体。いずれも長い年月が経ったうえに火事による損傷で状態は決して良くなかった。警察としても身元特定のために全力で鑑定を行ったのだが、見つかったのが床下ということが幸いしてね・・・4体のうち2体に関しては何とか鑑定することができた。それで・・・ここからは落ち着いて聞いて欲しい。結論から言う。あなたのDNAを照合した結果、鑑定できた2体はあなたの親族である可能性が高いという結果が出た。
さらに提供いただいたご家族のDNAとあなたのDNAを調べたところ、血縁関係がない全くの他人であることがわかった。それを踏まえてもう一度聞きたい。あなたとご家族の関係について知っていることを教えて欲しい」

私は刑事さんの説明が全く理解できなかった。いや、何を言ってるのかすらわからなかった。説明をされてしばらくぼーっとしていたと思う。その間、刑事さんの説明を頭の中で何度も反芻して、ようやく言っていることに理解が追い付いてきた。

「それって・・・何かの間違いですよね?」
刑事さんをまっすぐに見ることができず、床を見つめながら聞き返した。

「結果をもう少し詳細に説明すると、2体のDNAはあなたの母親と姉妹という結果が出ている。これがどういうことなのか我々警察としても非常に困惑しているところだ。もう一度訪ねるが、ご家族のことで何か知っていることがあればどんな些細なことでも構わない。正直に話して欲しい」
刑事さんの淡々とした説明口調に実感が全く湧かないでいた。

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