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不思議体験

とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

子供を泣き止ませろ
長編 2024/05/01 15:45 6,564view
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子供を泣き止ませろ

里美は旦那の転勤に伴い、慣れ親しんだ生まれ故郷を離れ、家族3人で関西のある地方へ移り住んだ。テレビでしか見聞きしたことのない関西弁に最初は圧倒されたものだが、3か月もすれば慣れてくる。住めば都とはよく言ったものだが、そんな実感が湧き始めた頃に彼女が体験した実話を紹介する。

「奥さん、今日も美人やね。ほな、大根一本サービスしたるわ!」
「おっちゃんおおきに!」
八百屋の店主に向かい大声でお礼を言う里美。関西での生活にもすっかり慣れてきたのか、関西弁を口にする余裕も出てきた。いつものように自宅から近い商店街でベビーカーを押しながら買い物をしていたときだった。ふいに携帯が鳴った。

「もしもし里美。俺だけど」
「孝ちゃん?どうしたの?」
電話口の相手は旦那の孝太郎。エアコンの販売会社で営業をやっている。
「実はさ、事故にあって」
「え!それで!?怪我したの?」
慌てる里美を諭すように孝太郎は状況を説明する。

「取引先との商談の帰りに車に突っ込まれてさ。それで今、〇〇病院に運ばれたところ」
とりあえず電話ができる状態で命に別状は無いが、念のためこれから精密検査を受けるところだという。
「まぁ大丈夫だとは思うんだけどさ。どうも足は折れているみたいで動かない。多分入院になると思うんだけど、里美悪いんだけど下着やら持ってきてくれるか?」

孝太郎との電話のあと、急ぎ自宅に戻り最低限必要になりそうなものを旅行用のバッグに詰める。ひとまず最低限の準備をし、8ヵ月になる息子の陽人のおむつとミルクも持って、バスで病院へ向かった。

〇〇病院は小高い丘の上にあり、自宅からは車で小一時間はかかる距離にある。里美は免許こそ持っているが、自家用車は一台しかなく普段は孝太郎が通勤で使用している。自宅周辺は商店街もあり、車が無くても特段不便することはないが、こういうとき不便さを感じた。
「しょうがない。バスで向かいますか」

「ご主人は右大腿骨を骨折しています。全治3か月というところでしょうか」
病室で医師から孝太郎の容態について詳細な説明を受けた。CTやら精密検査を行った結果、頭部には異常はないが、右の大腿骨の骨折で入院が必要になるということを告げられた。
「いやぁ参ったよ。見通しの悪い交差点で信号無視の車に突っ込まれてさ」
「ホントに心配したわよ」
「正直、骨折だけで済んだのは運が良かったです。良かったという言い方は好ましくないですが。救急隊員から説明ではお相手はかなりスピード出ていたようでしたからね。不幸中の幸いというべきでしょうか」

「あはは、日頃の行いのおかげかな」
孝太郎は冗談交じりに受け答えをする程、あっけらかんとしていた。その様子に里美は心底ほっとした。
「あははじゃないわよ。まだ子供も小さいんだから気をつけてよね」
里美の言葉に孝太郎は笑いながら大きく頷いた。

「そろそろ面会のお時間の終わりです」
看護婦の言葉に時計を見る二人。気が付けば20時近くになっていた。
「こんな時間か。悪かったな、気をつけて帰れよ」
「うん」
「しばらく入院になるけど、陽人のことよろしくお願いします」
「子供の事は心配しないで。それより自分のことを心配してね」
孝太郎と会話をしながら、おむつとミルクを済ませて病室を後にした。

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コメント(2)
  • この母親は、亡くなった母子に同情してはいけなかった??((( ;゚Д゚)))

    2024/05/01/22:39
  • 変に同情すると頼られるって言いますからね。

    2024/05/13/08:16

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