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不思議体験

Mineさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

カウンセリング
長編 2024/04/07 00:14 4,930view
6

私はある中学校で非常勤のスクールカウンセラーとして勤務している。
この学校に着任して最初に担当する事になったのが中学3年の女子生徒で楓(かえで)という子だった。
楓ちゃん本人ではなく母親の方から「不登校の我が子を学校へ通わせたい」と相談を受け、後日母親に連れ添われてきた楓ちゃんと私の3人で面談を行うことになった。
色白で目元に印象的な泣きぼくろがある楓ちゃんはどこか儚げではあるが可愛らしい顔立ちをしていた。
喋るのは母親の役目で楓ちゃんは一言も口をきかず隣りで黙りこくっている。
話によれば彼女は小6の頃から学校に通えていない、とのことだった。
特にいじめに遭っていた訳ではないがある日を境にぱったりと学校へ行かなくなったそうだ。いくら理由を本人に尋ねても頑なに口を開こうとせずそのまま部屋にこもる生活がずるずると続き、この子の将来はどうなるのだろうと不安だけが膨らむ日々も限界を迎え、私の元へやってきたというわけだ。
ちなみに夫とは早くに離婚し現在は母子家庭らしい。
途中私は何度か楓ちゃんに話しかけてみたが相変わらず口を閉ざしている。
面談を始めて20分程たった頃だろうか。母親が言いにくそうに口を開いた。

「先生、実はこの子・・・」

「お母さん!やめて!!」

母親の言葉を遮る楓ちゃんの突然の大声に私は一瞬心臓が跳ね上がった。

「あ・・・ごめんね楓。でもこの人はカウンセラーの先生なのよ?」

「でも、今はまだやめて・・・」

一体何があったのだろう。

「とりあえず本日はこれで終わりにしましょう。お母さん、次回は楓ちゃんと一対一で話してみたいんですがいいですか?親がそばにいると子供は緊張してしまうものですから」
私の提案に母親は了承し、楓ちゃんも小さく頷いた。根深い問題が潜んでそうだな、と私は改めて気を引き締めた。
後日、2回目の面談日は打ち合わせ通り彼女は一人で面談に訪れた。
学校までは母親に送ってもらったそうだ。

その日は土曜日で学校は部活の生徒以外は誰もいなかった。
まずは学校まで出向いてくれた事に私は感謝の言葉を述べた。

「今日来てくれたって事は、楓自身も現状を変えたいって気があるんだよね」

「・・・はい」
私の問いかけに蚊の鳴くような声で彼女は返事をした。かなり緊張しているのが手に取るようにわかる。まず不登校になったきっかけが知りたいがそれには相手の信頼を得ないといけない。
スカートの裾を握りしめながら小さな声ではい、いいえ位しか意思表示をしない彼女だが雑談の中で好きな音楽アーティスト同じだったという事が分かり、共通の話題も見つかった事で徐々にではあるが彼女の口数も次第に増えてきた。踏み込んだ話はしないように意識をする。今はまだその時ではない。この仕事に焦りは禁物だ。
その日は雑談だけで終わり、1時間に満たない面談ではあったが確かな手応えを感じた。

3回目の面談日では殆ど打ち解け、彼女は笑顔もみせる事も多くなり、私のことをアキちゃん、と親しげに呼んでくれるようにもなった。
楓という人間の輪郭がだいぶ鮮明になる。
こうして話てみると彼女も同年代の子と何も変わらない普通の女の子なのだ。
今は少し不安定なだけで。

1/3
コメント(6)
  • 最後、ゾッとしました。

    2024/04/07/07:56
  • ( ゚д゚)。
    輪廻転生、生まれ変わり(*´∀`)。
    あるんやな、ホンマに(*´∀`)。

    2024/04/07/10:45
  • ストーリー展開、ディテールにも隙がないし、文章力も確かでオチも秀逸。文句なく傑作です。

    2024/04/08/01:24
  • リーンカーネーション物。
    良いですね。

    2024/04/10/18:51
  • 同じ投稿者として、悔しいがこの話は大賞に値すると思う。
    多分一般票で稼ぐのは限界があるんだろう。常連さんは不可解な票の伸びがあって、正直萎える。

    2024/04/20/22:01
  • 楓さんはあなたを選んで生まれてきたんですね。もしくは、一瞬娘さんに憑依したのか。
    自殺者はそう簡単に転生はできないカルマを背負うと思っていますが、今生では幸せに育んであげて下さい

    2024/04/25/17:29

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