ごめんで済むなら呪いはいらない
投稿者:Mine (19)
幼稚園からの幼馴染のカオルが自宅で首を吊ったのが中3の時でした。
おとなしい性格でどこか不思議ちゃんな雰囲気のあるカオルはクラスでイジメのターゲットになってしまったのです。
持ち物を隠されたり落書きされたり、聞くに耐えない悪口を吐かれたりはまだマシな方で、酷い時には給食に虫を入れられたり制服をカッターで切られたりと、そのようなイジメが夏休み明けから本格的に始まりました。
イジメグループは5人の女子生徒達で、俗にいう1軍に属していたし、私やカオルとは違い有力者の親を持つ子もいた様で担任すら彼女達には口頭で軽く注意する程度で、具体的な対策には乗り出しませんでした。
それをいいことにカオルへのいじめは更にエスカレートして行きました。
私は居た堪れなくなり、カオルがイジメられている事を母親に話したところ、母親は学校に連絡してくれました。が、彼女達のカオルに対する非道な行いが収まらなかった所を見ると、やはり学校側は何もしてくれなかったようです。
そんな日々が続き受験を控えた12月半ば、ついにカオルは最悪の結末を迎えました。
もう二度とカオルに会えない現実に私は打ちのめされました。
かつて一緒に過ごした楽しい日々を思い返しながら私は悲嘆に暮れ、失意に沈みながらも何とか受験を乗り越え高校に進学しました。
そして新しい生活にも馴染み始めた5月半ばのことです。不思議な夢を見ました。
辺り一面色とりどりの花が咲き乱れる草原の中に私は1人佇んでいて、そしてここは夢の中だ、という自覚もハッキリありました。
辺りをしばらくふらふら歩き回っていると「ナツミ!」と後ろから声をかけられました。
振り返るとそこにはなんと、カオルが立っていたのです。
私は駆け寄り、思わず抱きしめながら何度も彼女の名前を呼びました。
夢でいいから会いたいと何度も願い、ついにそれが叶ったのです。
「久しぶり、ナツミ。私も会いたかったよ。」
生前と変わらぬ柔和な笑みを浮かべ穏やかな声でカオルは言いました。
それにしても夢だというのにまるで現実のような生々しい存在感が彼女にはありました。
そんな私の思いを読み取ったかのようにカオルは話し始めます。
「ここは夢だけど私は本物だよ。信じられないだろうけど、本当にあの世からナツミに会いにきてるんだ。」
「え?……マジで?」
「うん。例えばほら……」
カオルはお互いの生年月日や趣味、さらにいつか2人で行った場所、そこでした会話まで全てを正確に言い当てました。
それだけでなく声のトーン、話す時の独特の抑揚、所作の一つ一つまで私の記憶の中のカオルそのままで、そのことも目の前の彼女が本物だと裏付けていました。
再会の喜びに私は感極まってカオルの手を握ったまま泣いてしまいました。
それから私たちは思い出話や高校生活の事をひとしきり語り合い、笑い合いました。
文字通り夢のような時間を過ごしていると突然上空からジリリリリ…とベルの音が轟きました。
ビックリして私が怯えているとカオルは笑いながら「あれは目覚ましの音だから」と教えてくれたので改めて聞いてみると、確かに私がいつも使っている目覚まし時計の音のようです。
「もう起きる時間みたいだね。じゃあね。」
「待って!もう会えないの?」
主犯格は許せないが、見て見ぬふりされ助けてくれ無かった事の方残酷な事なのですね。
いじめた生徒は、自殺に追い込んでしまったと自覚すら持たず、のうのうと生きている人達がいるのも現実です。
いじめの無い世の中になればと考えさせられる内容でした。
怖かったです。
人間が一番怖いです
いじめをする人間は悪いけどいじめられる人間も悪いみたいな事をいう風潮があるかぎり、いじめはなくならない。
巾着袋が出てきた時点で、何となくオチが見えましたが、この手の話、好きです。