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心霊

Mineさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

オーイェー
短編 2023/12/31 23:12 2,238view
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「私、小さい頃”オーイェー”って友達がいたんです。」

怖いというより不思議な体験でした、と佐々木さんは話を始めた。

佐々木さんが幼稚園生の時の話。
当時家族三人でアパートに住んでおり、早くから自立心を養うという方針のもと、彼女には1人部屋を与えられていた。
生まれた時からそのアパートに住んでいた訳ではなく、彼女が4歳の頃に他所から移り住んで来たとのこと。

そして始まった時期は定かではないが、その部屋で姿なき声がそこかしこから聞こえてくるようになった、というのが今回の内容だ。

夜の時もあれば昼間の時もあり、時間帯は不規則だが『おーいぇー おーいぇー おーいぇおー』というような、子供の物と思しき奇妙な声を毎日のように佐々木さんは耳にするようになった。

初めて聞いた時は当然驚き、すぐさま母親を呼んだが「何も聞こえないよ?」と言われてしまった。
『おーいぇおー おーいぇー おーいぇー』
まさに今もこうして声は明らかに聞こえるのだが母親は怪訝な顔をするばかり。

どうやら大人には聞こえないモノなのか。
押入れの中も調べてもらったが変わった所は何もない。
あまり変な事言わないで、と逆に注意されてしまう始末。

それから引き続き昼夜問わず部屋で声がするようになるのだが不思議と怖いとは思わず、むしろ親しみに近い何かを覚えたという。
聞いた限りでは声変わり前の男の子という印象を受けたと佐々木さんは話す。

ちなみに『おーいぇー』と声がする以外、例えば物が勝手に移動したり電灯が明滅したりといったありがちな現象は特に無かったが、室内に自分以外の誰かの気配の様な物を何となくではあるが肌で感じる事はあったらしい。

そしていつしかその声をそのまま”オーイェー”と名付け、逆に積極的に語りかけるようになった。

オーイェーは何処にいるの? いくつなの? 外国人? 日本人? 君はオバケなの?

何を質問しても『おーいぇー』としか返ってこないが、彼女にとって良き話し相手だったという。
1人留守番している時や夜眠りにつく時。

心細さを感じる時、オーイェーはいつもそばにいてくれた。
皆には内緒の秘密の友達。

とはいえ部屋で独り言を言う娘をやはり両親は快くは思わなかったらしく、気味が悪いからやめなさいと何度も窘められていた。
パパとママもオーイェーの声が聞こえるようになればいいのに、と彼女は思った。

お絵描きの時間は想像で描いたオーイェーと自分自身が2人並んでいる絵をよく描いた。
絵の中のオーイェーは人間の姿の時もあれば、どこかのマスコットキャラのようなファンシーな見た目をしている時もあった。

そんな日々も長くは続かず、佐々木さんが小学校に上がるタイミングで一家は遠くへ引っ越すことになった。
引越し当日、家具類を運び出してがらんとした部屋に向かい「ばいばい、オーイェー」と彼女が別れの挨拶をすると、それに応えるように『おーいぇおー おーいぇー』と声が返って来た。
オーイェーも連れて行ければいいのにな。
いよいよ出発し、遠ざかってゆくアパートが完全に見えなくなるまで名残惜しく車の窓から見つめ続けたという。

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