修学旅行の客室電話
投稿者:佐木乃 (4)
わたしが中学生の頃、故郷の田舎町に住んでいた頃。ずいぶん昔の出来事です。
わたしが通っていた中学校。その修学旅行の行き先は関東圏で、いろいろなところを巡る日程になっていました。
初日の宿泊先は大きなホテルで、わたしとクラスメイトに二人用の相部屋が割り当てられていました。
部屋には備え付けの内線電話があって、使うことを学校から禁止されていたけれど、幼さが残る年頃のことなので、思ったとおり、夜中に電話がかかってきました。
わたしが電話に出ると、女の子の声が聴こえました。その子は少し口ごもりながら、こんなことを話し始めました。
ホテルに着いて、部屋のベッドに腰かけて。一息ついていると、すぐに。ドアが開いて誰かが入ってきました。クラスメイトではない人。知らない誰か。大人の女の人。初夏なのにコート姿で。大きめのショルダーバッグを掛けて。
急なことだったから、声を出すのも忘れていました。忘れていたのではなくて、声が出なかったのかもしれません。もしかすると身体も動かなかったのかも。
その女の人のことを呆気に取られて見ているときに、なんだか部屋の感じがさっきと変わっているような気がしました。部屋の中が古くなっているような。
女の人は見向きもしないで、そのまま窓際へ歩いて行きました。バッグから紐のようなものを取り出して窓枠のカーテンレールに括りつけると、大きな輪を結びました。
女の人はその紐の輪に頭を通すと、両脚を浮かせて宙吊りになりました。でも、すぐにレールが折れて壊れて、床に落ちて倒れました。
女の人は急いで立ち上がって、今度は窓を開けようとしたけれど、ホテルの窓は開かない造りで、何度か窓を手で強く叩いた後、振り返って早足で部屋から出て行きました。
そして目が覚めました。うたた寝をしていたみたいです。ほんの一瞬のあいだ。とても疲れていたから。一息つくつもりで、ベッドに腰を降ろしただけなのに。
あの女の人の顔。目も鼻も口も、ぼやけて見えませんでした。夢だったから。部屋もやっぱり古くなくて、元通り。夢をみていました。
電話口で女の子はそう言い終えると、通話が切れました。同室のクラスメイトは、もう先に眠っています。わたしは真夜中に独りきり。
部屋を見回して、カーテンレールを見つめて、ドアノブは見ないふりをして。電話はそれっきり、かかってきませんでした。
あの電話の女の子がどのクラスの誰なのか、もっと別の誰かなのか、夢なのかどうか。それは、わたしにはわかりません。
怖かったです。
句読点が多すぎて少し読みづらい。
ちょっと意味がわかりづらい
忘れられない修学旅行に、なりましたね。
ちょっとメンヘラっぽい文章がいいね