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意味怖(意味がわかると怖い話)

綿貫 一さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

深夜の乗客
短編 2024/04/08 09:34 2,584view
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これは、タクシードライバーのAさんから聞いた話である。

Aさんは深夜、広い霊園の中の道を、車を走らせていた。

その日は雨の金曜日で、飲み会帰りの客がよく捕まった。

今も一人、客を目的地まで運んできた帰りである。

再び人通りの多い道を流すため、近道をするのにこの霊園を通過していた。

自然とスピードが上がっていた。

ぽつりぽつりと街頭が灯るだけの、暗い霊園内を走らせていると、不意に『ある怪談話』が思い出されたからである。

「あるわけない。あるわけない」

Aさんは苦笑してひとりごちたが、直後、少し先にある街灯の足元に、手を上げる人影を見つけてしまった。

その人影は、ふら、ふら、と頼りなげに揺れている。

ウインカーを出し、スピードを落として近づくと、はたしてそれは、傘をさした髪の長い女だった。

うつむいていて、顔はよく見えない。

(うわ、イヤだな……)

Aさんは思ったそうだ。

頭に浮かんだ怪談話とよく似た状況に、なんだか嫌な予感がしたのである。

女は気だるげな動きで後部座席に乗り込んできた。

女と一緒に、様々な「におい」が流れ込んでくる。

雨の匂い。

線香の匂い。

そして――

(――酒くさっ!)

どうやらこの女は、大量にお酒を召し上がっているようで、車内は瞬く間にむせかえるような酒のにおいで満たされた。
においだけで酔ってしまいそうだ。

「――どちらまで?」

顔をしかめるながらAさんが尋ねると、

「○○町の~…、××の×まで~……」

女は、呂律の怪しい口調で行き先を告げると、そのまますぐに寝息を立ててしまった。

霊園を抜け、駅前を通り、静かな住宅街を進む。

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コメント(2)
  • オチがいい。面白かったです。

    2024/04/08/12:01
  • 綿貫です。
    おあとがよろしいようで。

    2024/04/08/14:10

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