山あいのトンネル
投稿者:佐木乃 (4)
わたしが高校生の頃、故郷の田舎町に住んでいた頃。ずいぶん昔の出来事です。
気持ちを寄せていた同級生に、思い切って告白をしたけれど、想いは成就しませんでした。
やぶれかぶれな気持ちで、数日を過ごしていました。ふと、そんな心情に合うような場所、曇っているような、濁っているような、そんな所に行ってみれば滅入った感情と合って慰められるかもしれない、そんなふうに考えました。
思い浮かんだのは心霊スポット。町から少し離れた山あいに、そういう場所があることを知っていたので、日中に一人で行くことにしました。山の中にあるトンネル。
通学のために原付免許を取っていたので、スクーターを運転して、よく晴れた日曜に心霊スポットへ向かって出発しました。
その途中でコンビニエンスストアに寄って、食べたい物、飲みたい物、気分で思いついた物を遠慮なく選んで買っていると、旅行をしているみたいで楽しくなりました。
スクーターを走らせて、登山口に着きました。山はハイキングコースにもなっていて、登山口の近くの小さな駐車スペースにスクーターを停めました。
その山道はなだらかで、人の手も入って整えられていたけれど、歩き続けるうちにしんどくなって、もうどうでもよくなってきました。
引き返そうと思って振り返ると、70、80メートルくらい後ろに、大人の男女の二人連れが歩いてくるのが見えました。遠くて顔立ちや表情はわからないけれど、二人とも笑っているような感じがしました。
引き返してすれ違うときになんだか気まずいことと、恋仲に見えるその二人連れにいたたまれない気分になって、とりあえずトンネルに向かって山道を進みました。
歩き始めると、意外とすぐにトンネルに着きました。とても短いトンネル。現地に着いてみると、こういうものか、こんなものか、そんなふうに思うくらいで、することもないので帰ることにしました。
帰り道であの二人連れとすれ違うことになるのが嫌だったけれど、姿は見えませんでした。途中に脇道があったのかもと思って、見回しながら引き返しました。
道の途中で、茂みに覆われるように、コンクリートブロックで組まれた物置き小屋のようなものを見つけました。崩れて隙間だらけで、もちろん、人影はありませんでした。
目を凝らして中を覗くと、暗がりに積石みたいなものがいくつか並んでいるのが見えました。それと、微かに線香のような煙臭さがしました。
結局、あの二人連れとはすれ違わずに山道を下り切って、スクーターを運転して家に帰り着きました。
翌日に、あのトンネルに行ったことを友人に話しました。友人もあの心霊スポットに行ったことがあって、「あそこはトンネルよりも、途中にある藪で隠れた変な小屋、あそこが気持ち悪くて怖い」、そう言っていました。
勇気ありますね。絶対ムリです。
意味がわかると怖い系?
一回読んだだけでは怖さがわからなかった。
???