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  • 10/1 9月度怖い話グランプリを決定し、殿堂入りを追加しました。

不思議体験

ねこきちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

公園とトイレと鏡
短編 2021/10/10 15:24 829view
二十年程前の話です。

文芸の趣味を通じて知り合った知人のAは、別の趣味としてバイクにハマっていて、一時期はバイトが終わると毎日の様に、夜のツーリングに出掛けていました。
ツーリングは独りのこともありましたが、彼のバイト仲間のBと一緒のことが多かったそうです。

ある日、二人は木更津方面へと出発しました。
Bが先行しAが追う形で走っていると、急にBが減速し、バイクを路肩に止めました。Bは「悪い、ちょっとトイレ!」と言い、バイクから降りると、道路脇の小さな公園に入っていきました。
ここ、公園だったのか。前を通ったことあるけど、気にしたことも無かったなとAは思いながら、Bが小走りで公園内のトイレの建物に向かっていくのを目で追いました。
夜中なので真っ暗でしたが、トイレの傍らには街灯が立っていて、Bが建物に入っていくのがはっきり見えたそうです。
Aは公園の柵の外で煙草を吸いながらBが戻ってくるのを待っていましたが、1本吸い終わってもまだBは出てきません。大でもしてんのか?出かける前に用足しとけよなと思いつつ、2本目の煙草を取り出した途端、Bが走ってトイレから出てきました。
街灯の光に照らされて一瞬見えたBの表情は、まるで何かに追われ、怯えるかの様に目と口が大きく開かれていました。

待たせてごめんと言いながら公園の柵を飛び越えるなり、Bはバイクに跨りました。話しかける間もなくBが発進したので、Aも仕方なくBに続いて発進しました。

目的地の港に着き一服しながら、Aは先程トイレから出てくる際に慌てていた理由をBに尋ねました。
少しの沈黙があった後、Bはトイレの壁が落書きだらけで、不気味だったのだと答えました。
普段は割とヤンチャで、怖いものなどなさそうなBがそう言うので、Aは笑いました。
しかしBは気にも留めずに続けました。
用を足して手を洗おうと洗面台に行き、壁に備えつけられた鏡をふと見た。
途端、鏡に映った自分から視線を外すことが出来なくなり、金縛りにあったように身動きも取れなくなった。
そのまま体感的には何分も経った様に感じたが、さっきようやく身体の自由が戻った。
そこで慌ててトイレから飛び出し、バイクのところまで走ってきた。
そんなことを、Bは語りました。
余りに淡々としたBの口調に、Aも茶化すことは止めて聞き入っていたそうです。
話し終えたBの、煙草を持つ手が震えていたと、後にAは語っていました。

その翌日、Bはバイト先への出勤中、交通事故で亡くなりました。
見通しの良い直線上での単独事故で、操作を誤りバイクで電柱にぶつかり、即死したとのことでした。
Aは突然の友人の死にショックを受け、暫くはバイクに乗る気がしなかったそうです。

しかしBの死から一年程した頃には、Aの気持ちも次第に落ち着いてきて、以前の様にツーリングを楽しむようになっていました。
ある日Aは、特に目的地も決めずに気の向くままバイクを走らせていました。
そして、自分があの公園の近くまで来ていることに気付きました。
この方面は、Bが亡くなってから何となく避けていたAでしたが、その日は何となく、あの公園に行ってみたくなったそうです。
Aは一年前のあの日のBと同じように路肩にバイクを停め、柵を飛び越えて公園に入りました。
そしてトイレに入るなり、驚きました。
Bの言っていた通り、点滅する蛍光灯に照らされたトイレの中は、落書きでいっぱいでした。
そして汚物とは違う、生臭さがうっすらして、ここにはいたくないと思うような雰囲気で溢れていました。
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コメント(1)
  • めちゃくちゃ怖い

    2021/10/11/08:41

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