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呪い・祟り

ねこきちさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

百合の花束
短編 2022/08/10 12:32 3,594view
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以前、中部地方に住んでいた時の話です。
高校の頃の同級生Aから、出張で近くまで来ているという連絡を受け、定時後に合流し二人で飲みに行きました。
久々の再会に酒も進み22時を回った頃、Aが「この近くにある心霊スポットに行ってみないか」と言い出しました。
その心霊スポットとは、地元ではそこそこ有名な廃ホテルで、肝試しに行った者が直後に自殺したとか、ホテル内で突然死した者もいるといった噂で、オカルト好きや廃墟マニアの間ではそこそこ有名な場所でした。が、私はかえってそういう知名度のある場所には大して興味がわかず、これまで足を延ばすこともありませんでした。
しかしAとの懐かしい話や近況報告に花を咲かせる内にテンションの上がった私は、是非行こうと心霊スポット見学に賛同しました。
翌日は私もAも休日なので、時間を気にする必要はありません。

早速駅前でタクシーを拾い、運転手さんに件の廃墟の最寄り駅に行ってほしいと伝えました。
「さては○○ホテルでしょ」
運転手さんは愛想よくそう言いながら運転を始めました。
正解!よくわかりましたね、などとAが言うと、こんな時間にあそこに行きたがるのなんて肝試ししたい人ぐらいだよと、運転手さんは笑って答えました。

20分程して、目的地に着きました。
運転手さんは親切に、廃ホテルの前まで車を進めて、私たちを降ろしてくれました。

「危ないから中は入っちゃダメだよ。あと、これ。電話くれたら迎車料金無しで来るから」と、運転手さんは自分の携帯電話番号を書いたメモを渡してくれました。

タクシーが発進したのを見送って、私たちは廃ホテルの方へ目をやりました。
ホテルの周りは雑草が生い茂り、更にその周囲は有刺鉄線で囲われていました。所々歪んでいる鉄線を見て、Aが「やっぱり中に入るやつもいるんだな」と言いました。その声は心なしか震えていました。
正直、私は酔いも醒めて先程までのテンションもすっかり落ちていました。と言うのも、道路沿いの街灯以外に何もない場所にそびえる廃ホテルの迫力と言うか、言いようのないおどろおどろしさに、すっかり気を呑まれてしまっていたのです。
どうやらそれはAも同じようでした。

しかし、ここまで来て何もせずに帰るのも勿体ない気持ちもあったので、取り合えず私たちは囲い沿いにホテルの周りを一周することにしました。
スマートフォンの明かりを懐中電灯代わりにして、私たちは暗闇の中を歩きました。
何事も起きることなく、ものの10分ほどで私たちは元いたホテルの玄関前までたどり着きました。しかし、そこでAがうわっと大声を上げたので、私は心底驚きました。
「なんだよこれー、こんなんさっきなかったよな?」
そう言うAのスマートフォンの明かりが照らす先に、白い百合の花束が落ちていました。
足元はずっと明かりで照らしながら歩いていたので、何かあっても見落とすはずはありません。さっきは花束なんて、確かにありませんでした。
私たちがホテルを一周する間に、誰かが置いて行ったのか?

私もAも心底気味が悪くなり、さっさとタクシーを呼んで帰ろうということになりました。
私は、先程運転手さんに頂いた番号に電話をかけました。
ところが、何度かけてもお留守番サービスになるばかりで、運転手さんは電話に出てくれません。
業を煮やしたAは、もういいよ、さっさと帰りたいと言い、タクシー会社に電話して普通に迎車を払って帰ることになりました。
20分程でタクシーが来ると、私たちはさっさと乗り込み、Aはホテルへ、私は自宅に帰りました。

翌日、私は知らない番号からの電話着信で目を覚ましました。
電話に出ると、驚いたことにそれは警察からの連絡でした。眠気もすっ飛び話を聞くと、○○さんとはお知合いですか?と尋ねられました。
○○という名前に聞き覚えが無いのでいいえと答えると、更に昨夜11時頃、○○さんにお電話してますよね?と言われました。
○○さんとは、私たちを廃墟まで連れて行ってくれた運転手さんでした。
私は正直に昨日のことを話しました。
夜中に廃墟前までタクシーで行ったこと、運転手さんが電話番号を教えてくれたこと、帰りに電話しても運転手さんは出なかったこと。
すると警察の方は、そうですか、ご協力ありがとうございましたと言い、電話は切られました。

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