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呪い・祟り

ねこきちさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

ノートと呪い
短編 2021/09/27 22:39 1,850view
小学生の頃、同級生に少し変わった女子がいた(仮にB子と呼ぶ)。
B子は友達もいない感じで、休み時間もクラスメートと遊びもせず、一人で机に突っ伏すようにしてノートに何かを書いていた。
ある雨の日の休み時間、友人の一人がB子からノートを取り上げた。特に考えなしに、ちょっとした悪戯のつもりでやったのだと思う。
「ほら、パス!」友人は、少し離れたところにいた私にノートを投げてよこした。

ノートには赤鉛筆でびっしりと何かが書かれていた。
数秒経ってから、それは全て左右反対の、所謂鏡文字で書かれた文章だということがわかった。
内容は全く覚えていない。

ノートを取り返しに来るかなと思ってB子の方を見ると、彼女はただ私の顔をじっと見つめていた。
私はバツが悪くなって、見ろよコイツやっぱりおかしいぜーと近くの男子達に向かって言った。
男子が集まってきてノートを回し読みした。皆がなんだこれとか、キモいとか言っている中、B子はずっと私のことを見つめていた。私も何故か彼女から目が離せなくなった。するとB子が一言「呪ってやる」と言った。

普段喋るところを殆ど聞いたことのないB子の不吉な台詞にギョッとしたのも束の間、始業のチャイムが鳴って先生が教室に入ってきたので、私達はノートを乱暴にB子に返し急いで自分の席に戻った。

その日の帰り道、私は何もないところで派手に転び、膝を縫う大怪我を負った。
近くにいた大人が救急車を呼んでくれたが、痛みに悶える間ずっと、「呪ってやる」というあのB子の声が頭の中でリフレインしていた。

それ以来、私はB子を恐れて学校生活を送っていった。あの大怪我はB子の呪いだったんだ。そう思い込んだ私は、極力B子のことを視界に入れぬように努めた。

翌年のクラス替え以降、彼女と会うことはなくなった。
彼女と同じクラスの友人に聞いたところ、クラス替え後間もなくして転校していったそうだ。
それを聞いて私は心底ほっとした。

それから二十年近くが経った。
私は進学、就職、結婚、妻の妊娠・出産と、これといった大きな問題も無い、平凡ながら幸福な人生を歩んでいた。
私はB子が転校してからも、人生の節目節目で彼女のことを思い出した。
子供の無邪気さと言い訳はしない。私は確かにB子のノートを持ったあの時、彼女の心を傷付けた。そして偶然大怪我をしてからというもの、暫くの間彼女の呪いに怯えていた。思うに、その恐怖こそが本当の呪いなのではなかろうか。
他人を傷付けることで、自らの心に負の重石を乗せることとなる。そんな一種の悟りを持った私は、誰かを貶めたり、不快にさせる様な言動をしないよう極力努めてきた。
その甲斐があって、私は周囲の人間関係にも恵まれ、温かい家庭も築くことができたのだろう。
切っ掛けは自分の酷い仕打ちだったが、結果的に私を良い方向へ変える契機となったあのノートの件は、決して忘れまいと心に誓っていた。
ただ、B子に謝罪ができないまま離れてしまったことが心残りだった。

私の30歳の誕生日のことだ。年中になったばかりの娘が、私に手紙を書いてくれた。
妻曰く、平仮名の練習帳を見ながら一人で一生懸命書いたのだという。
私は心から喜んで手紙を開いた。

「おとうさん おたんじょうび おめでとう」
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コメント(1)
  • 文章の書き方が上手い。すごく怖かった。娘さん大丈夫ですか?

    2021/09/28/21:08

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