【short_57】タクシー待ち

ある晩、ワタシと女友達の二人で飲んだ帰り。

終電も過ぎたのでいつものごとくタクシー乗り場で並んでいた。

次はワタシらかと思っていたら、後ろから５０代くらいのおばちゃんが血相変えて走って来て、「ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!超急ぎなの!!」と騒ぎながら横入りしてきて、タクシーを取られてしまった。

「あっ、あのクッソババア!!」と思ったが、友達が変なことを言う。

「いいのいいの。なんかあのタクシーには乗っちゃいけない気がしたもの」

この子はいつもノンキと言うか、いつも平静で怒ったところを見たことが無い。

そうこうしているとそのおばちゃんの乗ったタクシーが道路をUターンし始めた。
どうやら行き先が逆だったらしい。メンドクサイ客である。

が、そこに・・・ビッグフットというのであろうか?タイヤだけデカくしたハイリフトの4WDが突っ込んできて、タクシーにイキナリ乗り上げた。激しい音と共に後部座席はグシャリとつぶれ、ガラスが粉々に飛び散る。とにかく一瞬の出来事だった。

タクシーの前半分は助かったようで、運転手だけが飛び出してきた。
どうやらおばちゃんはタイヤの下で潰されているようだ。
まるでジューサーのように血が滴っている。

周囲から悲鳴が湧き上がる。私はそれを恐怖しながら見ていた。

「あ、あのおばちゃんが先に乗らなかったら、私達が犠牲になってたかも!」

そう言うと友達は・・・
「なんとなくそんな気がしてたのよね・・・」とポツリと言った。

(そんな気がしてたのに、おばちゃんには何も言わなかったんだ、この子・・・)

勘のスルドイ友達は大事にしようと思いました。