【short_92】ひったくり

オレは今、原付に乗って町を流している。
目的は・・・ひったくりさ。
歩行者や自転車に乗ってるやつに後ろから静かに近づき、
一気にスピードをあげて、抜き去りざまにバッグなんかをかっさらう。
これでなかなかテクのいるシゴトなんだぜ?

これまで何度もやって、けっこうおいしい思いをさせてもらった。
カネか食い物があればグッドだ。・・・まぁたまにカスもある。

・・・うん、一番ひどかったのは、紙袋をかっさらったら中身が犬のフンだった時だ。
それ以来、犬を連れてるやつは襲わないことにしている。学習のたまものってやつだ。

さて、そうこうしてる内にターゲット発見!!
自転車に乗ったババアが、前かごにデッカイバッグを載せてよろよろ走ってるぜ。
「イタダキだ!!」

オレは静かにスロットルを回し、タイミングを見計らって一気にダッシュした!!
「イヤッホーーイ!!」

「あっ!!返して!!ドロボウ!!」

一瞬の出来事に女は自転車から飛び降りて急停止した。
オレはバックミラーで小さくなっていくババアを置いて一目散で逃げた。

自宅アパートに帰る。鉄の階段を登る足が軽い。
さーて、今日の獲物はなぁにかなぁ~♪

部屋にあがり、電気をつけてゴミだらけの部屋の中で先ほど盗んだバッグを開けてみた。

「げぼぉぉぉぉぉ!!」

そこには、まだへその緒も付いたままの、生まれたばかりの胎児の遺体があった。