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心霊

迷い家
中編 2020/12/24 18:10 17,789view
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会社員の竹田さんが体験した話です。

竹田さんの会社では毎週末社長の奢りで飲み会をやるのが恒例となっていました。
まだアルハラなんて言葉がない時代の話ですので、竹田さんは決して酒に強いわけではなかったのですが、それでも付き合いとして毎週二次会、三次会まで拘束されるのが常でした。
もちろん場の雰囲気を悪くしない程度にペースは抑えていましたが、それでも三次会まで拘束されるとなればどうしても酔いは回ってしまいます。
結局その日も、竹田さんはべろんべろんの千鳥足状態で家路に着く羽目になりました。

腕時計を見ると、時刻は既に深夜二時を過ぎている。
竹田さんの奥さんは、夫の帰りがどれだけ遅くなろうとも起きて待っていてくれるタイプでした。
酔ってふわふわになった頭でもそのことに申し訳なさを覚えるくらいの良心はあったため、武田さんはおぼつかない足取りながらも家路を急いだそうです。

どれくらい歩いた頃か。
ふと竹田さんが道の先を見やると、玄関先に灯った明かりが目に入りました。

「おうい、あなた」
おもむろに竹田さんが足を止めると、家の前に奥さんが出てきて彼に向けて手を振ったそうです。
夫婦になってもう二十年以上経ちますが、こんなに遅くなっても笑顔で出迎えてくれる健気な妻の姿に竹田さんは思わず笑みをこぼしました。

悪い、遅くなった。途中で帰れる雰囲気じゃなくてさ。
ろれつの怪しい口で詫びながら、奥さんに肩を貸されて我が家に入る竹田さん。
家に入るなり、傍らにぴったりと付き添われて寝室に向かう。
襖を開けると和室の中には布団が敷かれていて、その脇に浅葱色の寝間着が畳んである……まさに至れり尽くせりでした。

奥さんが襖を閉じる。
その後ろでは、竹田さんの息子が笑顔で「おやすみ」と手を振っていたそうです。
今年で高校生になる自慢の一人息子。親思いのいい子に育ってくれたなと思いつつ、竹田さんは用意されていた寝間着に着替えようとした……のですが、どうやら思った以上に酔いが回っていたらしく。
あるいは家に着いたことで気が抜けたのか、竹田さんは結局着替えることなくそのまま布団に飛び込んでしまいました。
そうして寝入り出した竹田さんだったが、彼の睡眠は耳障りな電子音に妨げられました。
スーツの中の携帯電話が、メールを受信したことを告げる通知音を鳴らしたのです。
せっかく気持ちよく眠ろうと思っていたところを邪魔立てされて苛立ちながらも、寝ぼけまなこで携帯を弄り今しがた受信したメールに目を通す竹田さん。

メールの主は、奥さんでした。

『まだ帰ってこれないの?』 
メールの文面には、そんな文章が躍っている。
それを見た竹田さんが狐につままれたような顔をしてしまったのは無理のないことでしょう。
わざわざ家の前まで出てきて出迎えてくれたのは他でもない彼女自身だというのに。

ははあ、あいつ寝ぼけてるんだな。
まあ時間ももう遅いし、仕方のないことかもしれない。
悪いのはこんな時間まで待たせてしまった俺の方か。
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記事編集(作者用) 作者プロフィール
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コメント(13)
  • だんち?

    2020/12/24/20:52
  • なかなか怖くて面白いかった

    2020/12/25/11:32
  • 怖い怖い怖いよー

    2020/12/25/11:35
  • 怖面白い

    2020/12/25/11:37
  • 惜しい

    2020/12/29/14:24
  • 天界通信や奇妙を思い出すな

    2021/01/02/19:43
  • 現代版マヨイガですね。確かに、こんな感じになりそう!

    2021/01/06/08:07
  • 面白い。文も読みやすいです。

    2021/01/06/22:12
  •  面白い。読みごたえがあります。だが……。
     「後日、昼間に恐る恐るあの家があった場所を訪れてみると」。竹田氏は、行きは泥酔していて、逃げる時は無我夢中だったのに、どうして ”迷い家” のあった場所を覚えていたのでしょうか?
     上手の手から水が漏れましたね。これさえうまく設定すれば完璧だったのに。(へそ吉)

    2021/01/06/22:29
  • 面白いけど、ラストが理解出来ない。
    多分このオチで更に怖くなる仕掛けなんだと思うんだけど…。
    奥さんもマイホームも彼の妄想って事?
    それとも迷家に魅了され過ぎてそこに引っ越したって事?(逃げきれなかった?)

    2021/01/10/21:58
  • >今もあの“家”が現れた団地に住み続けている
    真面目に考えれば考えるほど意味が…団地とは「同じ敷地内に複数の棟が建てられている共同住宅」ですよね。その敷地内に家が現れた?後日訪れたらアパート????それが現れた団地に住み続ける?どれだけ考えてもちんぷんかんぷんなんですけど…誰か本当のオチを教えてください

    2021/01/11/08:11
  • オチが悪いとか、わからない、て言う人もいるけど、事実の話って案外曖昧だったり、記憶があやふやだったりするよな、と思いました

    2021/01/22/19:19
  • 俺にはこの団地って表現みんながなんでそんな違和感感じてんのかわからなくて、「団地」で画像検索して分かったんだけど、普通はアパートのでかい版みたいなのが並んでるのが団地って言うのね
    俺の実家も「団地」ってみんな呼んでるとこにあるんだけど、これが一派的に言うその団地とは違くて、向かい合う様に普通の一軒家が五つくらい並んでて間にそこに出入りする為の袋小路の道路が有る
    そんな空間がいくつも横に並んでる場所がど田舎には結構あって、これをうちの田舎じゃ普通は団地って言ってた
    この話に出てくる団地はそれだと思う
    その中の一つの家が空き家とかちょっとした借家になってるとかは普通にあったよ

    2021/02/07/06:09