怪談の真相

その少女の霊が上半身だけの姿であらわれる、という実話がもとになっていると言われていますが、まあ、ただの噂話でしょう。
何故かその『テケテケ』がやけにクローズアップされたのが半年くらい前。

そのあとすぐに『片側人間』の噂が流れたそうです。

「体が半分ないお化け、って、そこからきてるんだと思うんよね」
「ふーん、上半身と下半身が切断されたのが、体が縦に分かれたってことかあ……」
「その縦に分かれているってのもね、理科室にある人体模型からイメージされたんだと思うよ」
「ああ、あれか……確かに」

小学校の理科室にある人体模型が、右側に皮膚があり、左側が筋肉や内臓が剥き出しになっている形をしているのです。
それがやけにリアルで気味が悪い、と私が小学校に通っていたころからよく言われていて、怖がっている子もたくさんいました。

「それで右側だけの『片側人間』、か。なるほどね、そこに行き着くなんて、なかなか鋭いじゃないか」

小学生五年生ながら、そこまで理路整然と筋道を立てて考える妹に、すこし感心しました。

「まあ、おおかたのところはそんな感じなんだろうけど……」
妹はそこで意味ありげに私の目を見返してきました。
「『片側人間』は、ほんとにいるのかもしれないんだよね」
「え？」
私はすこしぎょっとしました。
「なんか……いるのか？」
「うん……ここ何ヶ月かのあいだ、女の子をたまに見るんだよ」

妹はこの世のものならざる存在を、見たり感じたりする『霊感体質』なのです。
私もそういう体質なのですが、妹のそれはかなり強いものです。

その少女は、髪が長く、青白い顔色をしていて、薄いベージュのブラウスと黒いスカートを穿いています。
その子のあらわれる場所は決まっておらず、教室や体育館、廊下の曲がり角に静かに佇んでいるそうですが……。

「いっつも体の半分しか見えないんだよね」
「え？　マジかよ」

見えないといっても、体が半分だけしかないというわけではなく、ドアやカーテン、曲がり角や舞台の袖から、体を半分だけ出している状態なのだそうです。

「まあ、それは右側だけってわけじゃないよ、左だけのときもある。でも一度に正面から両側が見えることってないんだよ」
「どういうことなんだろうな……俺は見たことはないけど」
「たぶん兄ちゃんが小学生のときは、その子はいなかったんだと思う、私が見えだしたのは本当にこの数ヶ月だから」
「ふーん……もしかしたら他にも、その女の子を見たことがある子がいるのかもなあ」
「そうかもね」