お婆さんの定位置

数年前の話です。
以前、彼女が住んでいたアパートの近くに、
昭和後半から平成初期に出来た三階建ての大型スーパーマーケットがありました。

店舗の真ん中にエレベーターがあり、階段は奥の方にあって、
あまり利用する人もなく、いつもひっそりとしていました。
明かりも少なくて薄暗く、どんよりとした陰気な雰囲気でした。

私が買い物に付き合ったとき、なんどか階段を利用することがあったのですが、
一階から二階の途中にある踊り場のベンチに、いつも座っているお婆さんがいました。

この世の人ではないので、『霊感体質』の私には見えていましたが、

彼女には見えていません。

いつからここにいるんだろうなあ、と思っていたのですが、
そのスーパーが閉店となり、建物も取り壊しとなりました。

跡地にはマンションができるらしいのですが、更地になったとき、そこを通りかかると、
空中に浮かんだお婆さんの姿がありました。

ああ、あそこがいつものベンチの位置だったんだな、と思いました。

マンションができる前に、彼女が引っ越したので、そこを通りかかる機会も無くなってしまいました。

一体何がお婆さんをあそこに留まらせているのか、今はあの位置がマンションのどこの部分になっているのかな、
と、たまに思い出します。