私を救ってくれた人
投稿者:ぴ (414)
そして学校の制服を着ている私と違って、着古したような薄っぺらいボロボロの服を着ていました。
見た瞬間にその人がホームレスだと分かりました。
私は少し怯みながら、おじさんを見ました。
そして「でも、ここはあなたの場所じゃないでしょ」と強気にも言ったのです。
いつもここで寝泊まりしているホームレスがいたとしたら、もしかしたらここはおじさんの定位置なのかもしれません。
だけど、他に眠れそうな場所はここしかありませんでした。
だから何としてでもここを取られたくなくて、生意気なことを言ってしまったのです。
この寝床を巡って、口論になると覚悟した私ですが、そのようなことは起きませんでした。
内心緊張している私を察したのでしょう。
おじさんは「そうだな」と言ったのです。
そうしてどこか別の場所に移動しようとしたので、私はとっさに引き留めました。
暗くて不気味な公園で、一人でいることが怖かったのです。
一人になって人恋しくもなり、少しでも長く話し相手がほしくて、ホームレスのおじさんを引き留めてしまいました。
それから起き上がって二人でベンチに座って、話をしました。
相手は本当に見ず知らずのホームレスのオジサンです。
一歩間違ったら犯罪にだって巻き込まれかねない状態で、危険だったと思います。
だけど、そのおじさんはそういう人物ではありませんでした。
なぜか赤の他人である家出少女の話を聞いてくれ、なぜか私に寄り添ってくれました。
特にアドバイスみたいなものをくれたわけじゃありません。
ただ静かに聞いてくれて、相槌を打ってくれました。
おじさんの話も聞いたのですが、どうやらおじさんは1年くらいここでホームレスをしているみたいです。
おじさんの人生も波瀾万丈で、苦しいものでした。
聞いていて私の悩みなんて小さいものかもしれないと思うくらいには酷い話でした。
そして家族を大事にしていなかったことを後悔していると私に言うのです。
多分おじさんは私を通して自分の娘を見ていたのだと思います。
だから突然一人で公園にいた私が心配で仕方なかったのではないでしょうか。
ホームレスのおじさんと話をしたら、私はなんだか無性に家に帰りたくなりました。
もう真っ暗だったので、おじさんがタクシーを呼ぶように言ってくれたのです。
最後にライトに照らされたホームレスのおじさんは笑顔でこっちに手を振ってくれて、優しさを感じました。
そして私はタクシーを拾って家にまで帰り着きました。
危ない行動でしたが、怖いと言うよりも何だかジーンとしました。
これは短編ドラマにしてもいいくらいジーンとするストーリーです。
ここ最近読んだもののなかで、最高でした。
いい話でした。