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心霊

ぴさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

私にしか見えない人
長編 2023/04/07 12:10 4,991view
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職場で働き始めたきっかけは、知り合いからの紹介でした。

私は以前の仕事をクビになってから、しばらく休養をとっていました。

前の仕事があまりに重労働で、極度の睡眠不足に悩まされ、いつしかちょっとずつ体調を崩してしまったのです。

そのせいで、数日休んだらまさかのクビになりました。

あまりの仕打ちに、今度は精神的に調子を崩してしまって、仕事を辞めてからもしばらく実家で療養したのです。

なんとか体調が良くなってきたと思った頃に、「ここで働かない?」と知人から誘いを受けました。

ちょうどタイミングが良かったので、簡単な面接を受けることにし、とんとん拍子に採用されました。

そこで、すぐにでも出社してほしいとのことで、私はこの職場に勤めることになりました。

最初は慣れない事務仕事にあたふたしましたが、次第に仕事も覚えてだんだんその職場に慣れていきました。

「事務職」というのは初めての職種だったので心配していたのですが、案外仕事内容は肌に合っていたようで、あっという間に仕事を覚えることができました。

人間関係も程よく良好で、とてもいいところに勤められて、ラッキーだったなと思っていたのです。

ただ一つ私には気になることがありました。

その職場には窓の傍にずっと立って外を見てる女の人がいたのです。

その人のことは初日から認識していました。

私が職場で挨拶したときも、みんながこっちを向いている中、その人だけずっと外を眺めているのでおかしいなと思っていたのです。

誰もその人に触れないし、名前を紹介してもくれないし、まるで存在していないかのように無視されていて、ひょっとして新手の虐めなのかと心配になりました。

私がその人のことを初めて尋ねたのは職場で働くようになって3日目のことでした。

仕事もせずに窓の外をぼーっと見ているだけのその人に、さすがに何かをさせたほうがいいのではないかと聞いてみたのです。

初めてそのことを話したときは、相談相手にきょとんとされました。

「あの人にお仕事を振ってあげなくていいんですか?」とさりげなく優しそうな先輩に相談したら、「あの人?」と不思議そうな顔をされました。

さっぱり話が通じなくて、困ってしまいました。

最初はその人のことを集団で無視しているのかと思いました。

そうやって相手を困らせてじわじわいたぶっているのかと恐怖しました。

だけど、だんだんと話のズレが気になって、話している内に窓の傍にいる人のことをみんなが見えていないことに気づいたのです。

これはいじめじゃなくて、その人が私にしか見えない人だと気づいたときは、さすがに背筋がぞくぞくしました。

見た目は本当に普通な30代くらいのOLさんみたいでした。

長い髪を一つにまとめて、小綺麗な顔をしていました。

いつも窓の外を覗くようにして見ており、何を考えているかは分かりません。

ほとんど動かずに窓の近くにいて、ただひたすら外を見つめている人でした。

私は毎日見なかったふりをして、その人を素通りするようになりました。

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コメント(1)
  • 怖いです。自分だけが見えるなんて。

    2023/05/17/06:04

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