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呪い・祟り

足が太いさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

会社のビルに古くからある井戸
長編 2022/03/09 20:55 3,976view
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私「アレ、ですよね。井戸のある部屋から聞こえるっていう…」
警備員「やっぱり、確認しに行かないとダメですよね。誰か閉じ込められているかもしれませんし」
その日勤務していた警備員さんは、初めてあの声を聞いたらしく、すごく怖がっていました。
しかも普段なら2人1組で警備しているらしいのですが、その日だけもう1人の警備員さんが急病で休みで、1人で勤務していたのです。
だから私も怖かったけれど、そのまま帰るのは忍びなく、「一緒に確認しに行ってみましょうか。2人いれば1人が閉じ込められてもすぐ対処できるので」と言って、一緒に井戸のある部屋を見に行くことにしました。

井戸のある部屋に近づくにつれて、「助けて、ここから出して」という女性の声が大きくなっていきます。
異様な雰囲気に飲まれないように心を強く持ちながら扉の前に行き、警備員さんが扉をノックして声をかけました。

警備員さん「どなたかそこにいらっしゃいますか」
「助けて…ここから出して…」

警備員さん「あのう、大丈夫ですか?」
「助けて…助けて…」
警備員さん「今、扉を開けますので…」
「早く早く早く早く早く早く」

警備員さんが声をかけると返答があるのですが、どこか様子がおかしいのです。
最初はか細い女性の声だったのが、声をかける度に段々と野太い男の声に変わっていき、私と警備員さんは顔を見合わせて扉からそっと離れました。
そのままゆっくり後ずさりして会社の玄関を出てしまおうとしたその時、狼か熊か、とにかく大きな獣が吠えるような声が聞こえました。

「ひいいい!」
私か警備員さんか、どちらの声か分かりませんが悲鳴を上げながら急いで会社の玄関を出ました。

会社から3mくらい離れたところで息をつき、警備員さんから社長に連絡をしてもらったのです。
会社のすぐ近くに家がある社長は、連絡から5分程で来てくれて、「後はこちらで何とかしておくから君達は今日はもう帰りなさい」と言って1人で井戸のある部屋に入っていってしまいました。
警備員さんは何かあった時の為に一応残り、私は荷物を取ってすぐ家に帰ったのです。

そして翌日、上司に辞表を出しました。
辞表を出して1ヶ月後に会社を辞めましたが、元同僚から聞くところによると、私が辞めた後も相変わらず怪現象が起こるし、何度お祓いをしても状況は変わらないようなのです。
そのうち、社長もまた心を病んでしまい、とうとう会社は倒産してビルも壊されてしまいました。

あの井戸に一体何が封印されていたのか、未だに分かりません。
けれど、知らなくていいものだったのだと思います。
知ってしまったら…、私は今ここにいないかもしれないのですから。

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