友人が、風俗（に行くの）を辞めた理由

「アナタ、カゾクをウラギッテ、タノシイ？？？」

　耳の奥に響く声が私を包み込んだ。私は、慌てて、扉を閉めようとしたが、女は、かまわずに入ってくる。なんのオプションだよ。と一瞬思ったが、そんな、オプションあるわけがない。そのまま、ベッドに押し倒されると私は気絶した。

　次に気が付くとベッドの上で寝ていた。いつの間に寝ていたのだろうか、さっきの女はいったい何だったんだ。私はそう思いながら、時計を見ると、すでに午前２時になっていた。呼ぶのをあきらめ、布団にもぐりこんだ。すると部屋に備え付けられた電話が鳴った。

　”こんな時間に・・・・・・”

　私は、訝しがりながら、電話を取った。

「ワタシ、アナタニヨバレタノ。」

受話器から、さっきの女の声がした。やっぱり夢じゃなかったのか。私は、荷物をまとめると慌てて、部屋を飛び出し、フロントに駆け込んだ。

「おや、こんな時間に出発ですか？」

　昼に対応したフロントマンがのんきに言った。

「部屋に変な女が出たんだよ。それに、変な電話がかかってきたんだ。」

フロントマンは、何事もなかったかのように「そうですか。ところで、お客様、部屋からどこかにお電話されませんでしたか？」

「したよ、したけど何なんだよ」

「あー、うちは、決められた業者様しか、入れないようになっておりますので、今後はお控えください」

　私は、そのまま、ホテルを出ると、その日は、ファミレスで朝まで過ごした。その後、嬢は呼んでいない。それに、似たような体験もない。

　一体、何だったんだろうか。