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呪い・祟り

Zさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

形代
長編 2022/09/05 15:15 3,745view
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ところどころフェイクは入れていますが、万が一誰かに迷惑がかかるといけないので、この話を転載したりYouTubeや動画配信サイトなどで朗読、配信するのは禁止とさせてください。


これは都内にある、私がよく行くBARのマスターの身に降りかかった話です。

BARは駅前の小さなビルの二階にあって、看板には往年のハリウッド女優の名前からとった渋い店名が書かれています。内装も渋くて恰好良い感じなのですが、いつも見かける常連客を中心にみんな仲の良い、落ち着いていながらも明るい雰囲気のお店です。

実は、このBAR、ここのところ休業していました。マスターが急に体調を崩して店をしばらく閉めていたのでした。心臓が悪かったのだとか。詳しいことはわかりませんが、「不整脈」とか言っていたと思います。最後にマスターに会ったときには、顔面蒼白でバーカウンターの中にうずくまっているところを、私と数名の常連客で介抱し、救急車を呼ぶ騒ぎになったのでした。それ以来、店は休業。私もすっかり駅前のあの周辺からは足が遠のいていました。

ところが先日、「BARの営業を再開する」という連絡がマスターからLINEで入ったのでした。そのときに、「ちょっと出てこれない?」と私はマスターから呼び出しを受けたのです。たまたま会社が休みだったこともあって、私は久々に店に寄ることにしました。

これからみなさまにお話するのは、そのときに私がマスターから聞いた、にわかには信じがたい、でもぞっとするようなお話です。お断りしておきますが、お話に出てくる名前はすべて仮名です。



おう、イシイちゃん。久しぶりだなあ。あのとき救急車呼んでくれたの、イシイちゃんだったんだって。ありがとうね。本当に助かったよ。ほら。まあ、座って座って。

え?体調?おかげさまで、まあ、何とか大丈夫だよ。今度からまた店開けるからさ、イシイちゃんも飲みに来てよ。ほら、ビール。サービスね。

ところでイシイちゃんさあ、メグちゃんって覚えてる?そうそう、前に少しだけウチの店に来てたけど、すぐ来なくなった黒髪ロングのきれいな子いるじゃない。実はちょっと言いにくいんだけどさあ、俺、あの子とデキてたんだよね。奥さんも子供もいるのにだって?ああ、そうなんだよ。嫁や子供には悪いことをした。何か、魔が差したって言うかさあ。それで、今回はひどい目に遭って…。

え、嫁に怒られたとか、離婚して慰謝料がどうとか、そんな話じゃないよ。

そうじゃなくてさ、俺、しばらく店休んでただろ。実はな、あれからずっと入院してたんだよ。心臓が悪くなってね。急に息が苦しくなってさあ、意識がなくなって、気がついたら病院のベッドの上だろ。参ったよ。

え?入院とメグちゃんと何の関係があるかって?それがさ、大有りなんだよ。俺は、たぶん、今回の件がメグちゃんの呪いじゃないかと思ってるんだ。…おい、何だよ。笑うことはないだろ。こっちは深刻なのにさ。

俺も最初はメグちゃんみたいな若くてきれいな子に言い寄られたときには、チョット信じられなかったよな。店閉めて帰ろうとしたら、メグちゃんがまだ外にいてさ。「どうしたの?明日仕事は?」って聞いたら、急に抱きしめてきてさ、「あたし、マスターのことが好きになっちゃったんです」なんて言うんだ。

そのときの俺ときたら、「おいおい、マジかよ。あれだろ、ここで俺がウンって言ったら、怖いお兄さんとか出てくるんだろ…」なんてばかなことが凄い勢いで頭に浮かんでた。でもさ、メグちゃんの香水のいい匂いがふわっとしてきて、強引にキスされたら、もう何にも考えられなくなってた。その日はもうそのままホテルに行って、俺はメグちゃんと寝た。正直、信じられないくらい体の相性がよくてさ。ばかだよなあ、男ってさあ。

それからだよ、俺とメグちゃんがデキてたのは。

最初は、あんな美人が俺といるのが信じられなかったんだけどさ。結局、すぐ別れたんだよ。え?嫁にバレたから?ちがうよ。嫁も子供もメグちゃんのことは知らない。そうじゃなくてな、何かヤバい子だったんだよ、メグちゃん…。

あの子、物凄く重いんだよ。

ここに来ていつもひとりで飲んでたのはいいけど、飲みながらずうっと俺のこと見てくるだろ。「他のお客さんも見てるからそういうのはやめろ」って言ったら、「私と付き合ってることは、ほかのひとに言えないような恥ずかしいことなんだ…」とか言ってぐすぐす泣き始めるし。

「そのうちオマエとはいっしょになるつもりだけど、一応俺もまだ妻子ある身だし、それにバーテンダーっていう仕事で客に手を出してると思われるといろいろ大変なんだ。もう少ししたらちゃんとするからもうちょっと待ってくれ」って昼間にどっかのカフェで一時間くらいかけて話してやったら、ずうっとうつむいてるし。

マア、最終的にはぼそっと「わかった」なんて言っていったんは引き下がってくれたけど、その後がまた大変でなあ…。

メグちゃん、それからは店の外をうろつくようになったんだ。え?その割には、気が付かなかった?そうか。正面にはいなくて、裏をうろついてたからな。お客さんからは見えないだろう。俺が空き瓶とかを捨てに出ると決まって、近くにいる。いま偶然通りかかりましたって顔をしてな。でも、俺にはわかってるんだ。裏のドアにはカメラがついていて、行ったり来たりしてるメグちゃんの姿がちゃんと映ってた。

こんなに粘着質だとは…、初めての日に自分ん家に連れてったりしなくて正直よかったよ。

そんなことがあって、メグちゃんに「頼むからもう店には来るな」って言ったら、またうつむいて「わかった」ってぼそっと言ってた。そこから、確かに営業時間中にメグちゃんがちょろちょろしてるのを見かけることはなくなった。この子重いなあって思った俺は、だんだんメグちゃんと会う回数も減っていった。

でもな、顔を合わせなくなったと思ったら、今度は手紙が置いてあるんだ。手紙だぞ、手紙。このご時世、LINEとかもあるってのに、いちいち重いんだよ。

「好きです」、「会いたい」、「抱いて」、とかそんなことがびっしり書いてある紙切れが店のポストにいっぱい入っていたり、それどころか、駐めてある俺の車のワイパーのところにまで挟まってる。それだけでも発狂しそうだったけど、それでは終わらなかった。

最初はボールペンかなにか黒い字だったのが途中から、変な色になった。掠れていて読みづらい。何だろう、茶色っぽいっていうか。どうもふつうのインクじゃない。何だろうなあってよく見てみたら、…たぶん、あれは血だった。ほかにも、ポストには女の使用済みのナプキンとか、ティッシュに包まれた髪の毛みたいなのとか、手紙以外にも薄気味悪いのが入るようになった。

俺はもう耐えられなくなって、メグちゃんを呼び出した。

久しぶりに顔を合わせたら、メグちゃん、何か凄いきらきらした目をしててさ、「やっと会えた」とか「やっぱりオマジナイの効果があった」とか言うんだ。「オマジナイって?」って訊いたら、詳しく教えてくれたよ。訊くんじゃなかった…。
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コメント(10)
  • これは本格怪談
    最後ゾッとした

    2022/09/05/15:38
  • マスタークズやん😠

    2022/09/05/16:03
  • ここ最近の話で1番面白かったです

    2022/09/05/18:19
  • マスター、昔から既に呪われてた?

    2022/09/06/10:09
  • やっぱ女癖悪い人は多かれ少なかれ人から恨まれてるんだろうなぁ

    2022/09/06/18:32
  • 他の投稿者さんが霞んで見えるくらい文章力ずば抜けてますね
    素晴らしい

    2022/09/07/12:10
  • マスターの台詞を稲川淳二で再生するとまた違った面白さがある

    2022/09/08/22:57
  • 現代版魔女

    2022/09/09/10:10
  • キモコワですね。

    2022/09/10/05:14
  • 捻りの効いたオチで面白かった
    プロの匂いがする

    2022/09/13/20:22

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