ドリームボックス

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翌日のことである。警察から１本の電話が入った。
逃げた野犬を保護するのを協力してほしいとのことだった。
話を聞くと不可解な点があった。野犬は処分場のドリームボックスから逃げたのだという。
ボクの脳裏に嫌な予感が走る。

「それって・・・黒い犬ですか・・・?」

「そうです、よくわかりましたね」

「でも・・・あのドリームボックスからどうやって逃げたんですか?逃げられないように出来てますよね、あの装置って?」

「処分場の職員がいつものようにガスを噴射するボタンを押し、１５分後にガス室内を排気してからドアを開けたそうです。いつもならそこには死体だけが転がっていて、あとは焼却処分するだけなのですが・・・一頭だけ生き残っていたものがいて、ドアを開けた瞬間に飛び出して逃走したそうです。・・・残念ながらその時飛び掛かられた職員が１名、頭を強く打って亡くなっています・・・」

「そんなバカな・・・第一、あのドリームボックスで死なない事なんて・・・」

「だから我々も、犬一匹とはいえ捜索に乗り出しているのですが・・・ここはぜひプロの方のお力も借りたいのです」

我々は小ミーティングを開いてメンバー間で話し合った。
警察に協力すれば、それは間違いなく犬の処分に加担したことになる。
NPOの理念として、それはできない相談だった。

が、そこで昨日退職願を出していたメンバーが手を挙げた。

「やっぱり、オレ、退職させてもらいます。そしてオレが警察に協力します。
どうですか?　それならNPOの理念を壊すことにはならないでしょう!?」

我々は慰留したが、彼の信念は変わらないようだった。
我々にはもう、彼を見送ることしか出来ない。
彼の退職願を受理し、警察へ向かわせた。

ボクはいつの間にか、心の中で彼を応援していた。

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それ以後、彼とは連絡が取れず、黒い犬が捕獲されたという報告もまだ入っていない。