線状降水帯と龍神

　みなさんは線状降水帯をご存知だろうか？

　最近はニュースなどでも盛んに報道されるようになり、聞いたことがある方は少なくないだろう。

　簡単に説明すると、線状降水帯とは次々と発生する積乱雲が列をなし、同じ場所を通過・停滞することで、線状に伸びた地域に大雨を降らせるとうものだ。

　ここからが私の話だ。

　地域は特定防止のため伏せるが、私の住んでいる地域は線状降水帯の影響で大規模な水害にあった。

　これはその時被災地で出会ったお坊さんから聞いた話である。

　私は被災後、災害ボランティアとして瓦礫の片付けなんかを行っていた。酷い水害で何人も亡くなったのだが、その時一緒にボランティア活動をしたのがこの話を教えてくれたお坊さんである。
　
　最初はお坊さんがボランティアとは、さぞ高僧なのだろうと、話しかけるのも恐れ多かったが、話してみると案外気さくなお坊さんで、二、三日もすればあっという間に打ち解けた。

　夏の暑い時期だったこともあり、2人で汗だくになりながら作業した。

　私は「ビールでも飲みながら作業したいですよ。」とお坊さんに冗談混じりで話してみたが、お坊さんも案外乗り気に「なら今日の夜、作業後一杯やりますか。」て言うもんで、2人で私のアパートで飲むことになった。

　そして夕刻、簡単な食べ物とつまみと酒を買って2人でアパートに向かった。お坊さんは「早く飲みてぇな。」なんて言うから、内心「とんだ生臭坊主だな。」と思ったが口には出さないでおいた。

　2人とも３０代前半ということもあって、地元の同世代の話で盛り上がった。
　だいぶ酒が回った頃、へべれけになった事で突っ込んだ話を聞いてしまった。

私「お坊さんが、ボランティアってのはやっぱり修行の一環なの？」

と今思えば少し失礼な事を言ってしまった。裏腹にお坊さんはヘラヘラと笑いながら答えてくれた。

お坊さん「いやぁそれもあるけどね。水害の後は土地が荒れるんだよ。良くないものが雨嵐に乗って、よその土地からやってくんの。私はその穢れを清めて周ってるんだけど、ただお経唱えて周ってもバツが悪いから、ついでにボランティアもやってんだよ。」

私「え、穢れ？お坊さんってやっぱそういうの見えるの？」

続け様にまた不躾な質問をする私に、お坊さんは優しく答えてくれた。

お坊さん「全員ってわけじゃない。俺は子供の頃からそういうのに敏感で、寺に入った頃は生きてる人間とそうでない人間の区別も出来なかった。今は修行して、ある程度見分けられるようになったけど。」

　とあまりにも非日常な事を淡々と語った。

　幽霊なんて生まれてこの方一度も見た事ない私は、こういう世界って本当にあるんだなぁと思った。

　見た事は無いが、昔から某オーラの◯や怪奇心霊マル秘ファイル魔界潜◯、ア◯ビリーバボーの心霊特集なんかが大好きだった私は胸が高鳴り

私「その穢れっていうのは、やっぱり幽霊や悪霊みたいな奴なの？」
と聞いてみた。

お坊さん「いや、違う。」

怪訝な顔でお坊さんは続けた。

お坊さん「線状降水帯って知ってるだろ？今回の水害みたいな大雨の原因なんだけど、これを起こしてるのは龍神なんだ。」