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kanaさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

【USAのUMA事件】-研修生 朽屋瑠子-
長編 2023/06/03 22:15 14,826view
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この事件はすぐに州警察から州知事に連絡が行き、対処が求められた。
州政府は極秘の会議を開き、付近一帯を通行止めにするなどして封鎖し、州政府傘下のテキサス州防衛隊(州兵)が配備されることになった。

あきらかな殺人事件が、なぜこれほど大事になったのか?
答えは被害者の一人が撮影していた動画にあった。
彼らは野ブタを虐殺するシーンをすべて動画に撮り、それを動画投稿サイトなどで配信することで、かなりの広告収入を得ていたとみられ、今回もその一部始終が動画に納められていたのだ。・・・果たしてそこに映っていたものとは・・・巨大な謎の生物であった。

全身が青黒く、巨大なイモムシのようにも見える・・・が、あまりに巨大で全身が映しきれていない。おそらくそいつのしっぽが、走るSUVを引っかけて転倒させた。
投げ出された男たちが半ばパニックのように叫びながらアサルトライフルをその化け物に撃ち続けている。しかしいっこうに効き目がない。やがて弾が尽き、走って逃げ出そうとするが、なにか触手のようなものが伸びてきて次々と男たちの首に巻き付き、吊るしあげた。

すでにカメラは地面に投げ出されており、すべての状況はわからない。だが、ドサッという音とともに頭の無い男性の遺体が映し出されたことから、彼らを殺したのがこの化け物であることはほぼ間違いない。そして失われた頭部は、やつが持ち去ったか、食ったのだろう。

テキサス州防衛隊は、この化け物討伐をするため、これを特殊訓練のひとつとして極秘裏に実行に移した。多くの州兵は周辺の封鎖を行い、物資搬送などの訓練だと思っていたが、ごく少数の部隊だけが真実を知らされ討伐の任務に就いた。

事件のあった農場周囲を旋回飛行しながら偵察するヘリが3機。
討伐隊として50名からなる1個小隊が任務に就いた。
そしてその夜、激しい戦闘が行われた。

結論から述べよう。その夜、化け物と会敵した小隊は、ライフル、無反動砲、迫撃砲等で攻撃するも、一向に傷を負わすことができず、対地支援攻撃としてヘリからも30ミリのチェーンガンがお見舞いされたが、激しい火の粉をあげるだけで、倒すことはできず、撤退となった。幸いだったのは、兵士に犠牲者が出なかったことくらいだろう。

この様子は上空のヘリから逐一動画に撮影され、分析されることになった。

そしてこの騒動はFBIの知る所となり、管轄がテキサス州から連邦捜査局に移った。
どういった意図があって連邦にまで極秘で動いたのか、テキサス州知事は後にこってりと絞られたらしい。どうせ政治家の考えることはつまらないものだ。秘密を保持することの強みと言うものを得たかったのだろう。

テキサス州防衛隊が収集した情報などすべてがFBIに巻き上げられ、調査はそのまま極秘で進められたが、人口密集地への波及などを考慮し、FBI長官から速やかなる排除命令が出た。

問題は、いかにして排除するかだ。
前述の戦闘ではっきりしたのが、並の軍用兵器では歯が立たないという事だ。

偵察ヘリから撮影された動画を詳しく分析した結果、わかったことがある。
化け物は弾丸を受けているわけでも、はじいているわけでもないのだ。
受けた弾丸は素通りしていたのである。まるでそこに何もいないかのようにだ。
これではいくら撃っても無駄なことだろう。

ヘリから映された全体像は全長10メートルはあろうかという大きさで、全身に毛は無く、
イモムシか、カバのようにぶくぶくとしていたが、頭部周辺には触手のようなものがたくさんあり、その真ん中に口なのか、穴が開いているようだった。暗くて細部まではわからないが、イソギンチャクに似ているようでもあった。
それがしっぽのほうから土の中に潜って行く姿も捉えられていた。

やつは地中にいる。上空から地下の施設を破壊するための爆弾があるので、それを使おうという案も出たが、すぐに却下された。やつには既存の兵器が効かない。爆弾が効くとは限らなかった。

急遽招集されたこの会議に参加していた一人の男から、突飛な作戦が提案された。
彼の名はロジャー・スミス。アメリカ陸軍特殊部隊「グリンベレー」の大佐だ。

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コメント(12)
  • kamaです。
    朽屋瑠子シリーズも今作で7作目となりました。過去作品もお読みいただくと、より世界観が広がると思います。よろしくお願いします。
    今回のお話は、朽屋瑠子シリーズの中でも最も長編となった【より子ちゃん事件】で瀕死の状態になった朽屋が復活する過程でアメリカに研修に行っていた時のお話になります。
    朽屋シリーズは時系列がバラバラなのはご了承ください。
    ロマンホラーって感じで、気軽に楽しんでいただければと思います。
    また誤字などありましたらお気軽にお知らせください。

    2023/06/03/22:21
  • 先生の久しぶりの力作を楽しみです。

    2023/06/04/01:44
  • ↑kamaです。毎度読んでいただきありがとうございます。
    朽屋瑠子シリーズは別に怪談としてぜんぜん怖くないし、なんなら中二病全開で、話も長くてYoutubeでも2回くらいしか朗読されたことありませんが、自分で書いてて一番楽しいです。
    えぇ、これが自己満足の世界というやつです。

    2023/06/04/11:16
  • 「沖縄のキャンプ座間」が気になってしまいました。沖縄なのか座間なのか。今後のストーリーに影響なければ流すのですが。

    2023/06/04/20:21
  • ↑kamaです。設定のご指摘ありがとうございます。「沖縄」をはずさせていただきました。
    実は最初に書いた原稿で、大佐が沖縄のキャンプシュワブにいた設定にしていたのですが、
    ご存じの通りキャンプシュワブは米海兵隊の基地で、グリンベレーと海兵隊の協力関係があったという設定もできますが、やはり陸軍は陸軍ということで、途中で座間に変えたのですが、沖縄のまま進めてしまいました。ご指摘大変ありがたいです。またなにかおかしなところがあったら教えてください。

    2023/06/04/21:08
  • ラストの方でチョコバーを差し入れるマーベリックがかわいくてちょっと萌えました。

    2023/06/05/08:04
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。萌えは大事ですね。

    2023/06/05/18:35
  • 学業と訓練の二刀流の瑠子、カッコいい!

    2023/06/05/19:30
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。でも、実質1年留年です。そこはテヘペロです。

    2023/06/05/21:05
  • ちょっと待て、16歳の太ももで三角締めって、ご褒美じゃねーか!

    2023/06/07/12:40
  • 最近、射撃場という言葉をよく目にする。ひとつはこの作品。もうひとつは自衛隊のニュース。

    2023/06/14/22:06
  • 出だしのセリフ、北斗の拳かと思った。

    2023/07/01/17:14

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