奇々怪々 お知らせ
           
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不思議体験

知らない家族
長編 2021/02/28 22:11 7,148view
両親二人とアパートの一室で暮らしていた竹本少年はその日、いつものように夕食の席に着いた。
食卓の上には魚の煮付けや味噌汁、漬物といった和風のメニューが並んでおり、お腹の空いていた彼はさあ食べようと箸に手を伸ばした。

そこで、「おや」と思ったのだそうだ。
食卓の上にあるのは見慣れ使い慣れた自分のいつもの箸。
プラスチック製で色は青色。竹本少年が当時好きだった飛行機の絵があしらわれた、どこにでもあるような子供向けの品物である。

それが、どういうわけか卓の上に二膳ある。
箸というのは、二本ひとそろいになって初めて“一膳”と扱うものだ。
つまりその時、竹本家の食卓には飛行機柄の青い箸がふたそろいあった。
もしかするとそういう家もあるのやもしれないが、わざわざ折れた時のことを想定して予備の箸を買っておくなんてことはそう無いだろう。
少年は小首を傾げながら、食卓を共に囲んでいる両親に対して問いかけた。

「ねえ、なんで僕の箸がもうひとつあるの?」

すると一瞬、賑やかなはずの食卓がしんと静まり返った。
「……ホントだ、一膳多かったね」
「ママはおっちょこちょいだなあ。ほら、待っててやるからしまって来い」

我が子が示した余分な一膳を、お母さんがサッと手に取って台所へ持っていく。
お父さんはテレビを点け、はははは、と静けさをかき消すように笑い声をあげた。

あ。いま、なにか誤魔化された。

竹本少年は、幼心にそう思ったという。
彼は以前、お母さんの財布から五百円玉をくすねたことがあった。
人気のカードゲームに使うお小遣いがほしくて働いた悪事はすぐにバレたが、必死にシラを切ろうとした彼にお母さんは厳しい目をしながら言った。

『あんたの様子見たら、嘘ついてるかどうかなんてすぐに分かるんだよ。親なんだから』
きっとさぞかし慌てていて、動揺しまくりの有様だったのだろう。
その言葉に観念して竹本少年は悪事を白状し、こってり絞られ、もう二度としないと誓うことで手打ちとなったのだったが――その時のお母さんの気持ちがなんとなく分かった気がした。

あの箸、僕の箸じゃないのかな。
不思議に思いながらも、たかだか箸が一膳多かったくらいのことだ。
気にする心よりも食欲と空腹が勝ち、いただきますの挨拶をした時にはもう違和感を抱いたことすら忘れてしまっていた。


それから何ヶ月か経ったある日のこと。
竹本少年は、まだ午前中だというのにもう家路に就いていた。
この日は学期末特有の短縮授業で授業が午前中に終わり、給食も出ない日だったのだ。
 
このことは何日も前から告知されていたのだが、生憎と彼は典型的な“配布物を貯めてしまう子供”だったため、うっかりお母さんにその旨を報せ忘れていた。
竹本少年の親は共働きだから、昼間は家にいない。
しまったなと思いつつも、鍵は持っているし、冷蔵庫を開ければ何かしら食べ物はあるだろう。
昨日のおかずがあればそれで良し、無ければ無いで卵かけご飯の一杯でも適当に食べればいい。
食べ終わったら後片付けをして遊びに行こう。今日はサッカーの約束をしてきたから、なるべく早く公園に乗り込みたいな――。
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記事編集(作者用) 作者プロフィール
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コメント(2)
  • 屋根裏に双子のガイジデモ飼ってたんだろか?

    2021/03/22/23:32
  • 死産した子供の霊が一緒に育ってたとか?
    さすがに実際に生きている子供を誰にも気づかれないように育てるってのは無理があるだろうし

    2021/03/28/17:05