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心霊

Nさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

賃貸の一軒家に引っ越した結果
長編 2022/12/17 23:03 13,651view
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コップをもって部屋に戻ると、妻はベッドに横になってた。

「妻子…?」

さっきとは打って変わってスヤスヤと深い眠りについていたので、起こすのは可哀相だと思い、水は結局俺が飲んだ。
そのせいか数時間後にまた目が覚めてトイレに起きたが、その時も妻は眠っていたので少し安心した。

翌朝、俺は妻に休みが取れないか上司に相談してみると伝えると、妻は「え?なんで?」と不思議そうな顔を向けた。

「いや、妻子も疲れてるだろ?さすがにまとまった休みは取れないかもしれないけど、たまには俺が育児やるよ。その間はリフレッシュしてほしいから」

俺がそう言えば、妻は「別に大変じゃないけど、まあ、夫君がそうしてくれるなら有難く休ませてもらおうかな」と楽しそうにキッチンに立ってたので、やっぱり休養が必要だったんだと俺はしみじみ痛感した。

その日の晩、俺は何とか休日前に一日だけ有休が取れる事になったので、金曜土曜の二日間、妻に休暇を楽しんでくるように伝えた。
妻は「んー、何しようかな」と嬉しそうに悩んでいたが、俺の方も育児を学ぶのに忙しくて妻に色々やる事を教わっていた。

そして、休日の二日前、水曜日だったか、妻が突然二階から駆け下りて来た。
それはもうドタタタタ!と音を立てるもんだから階段を踏み外したのかと思って俺も廊下に飛び出した。

すると妻が俺の懐に半ばタックルするように飛び込んできたから「ブフッ」と変な息が出た。
だが、妻は「二階に誰かいるかも!」と涙目で階段を指差すので、俺は瞬時に真面目モードに入り、丸めた新聞紙を片手に二階へ駆けあがった。

今にして思えば新聞紙で侵入者に対抗しようとした俺はどうかしてた。

それで二階に上がって寝室の扉が開きっぱなしなのを見て、妻が言ってたのはあの部屋だなと思い、「誰だてめえ!」と声を荒げて踏み込んだ。
しかし、僅か八畳の寝室には夫婦のベッドとベビーベッドくらいしか大きな家具が置いてないから見渡せば人が居るかどうかくらいすぐに分かる。
勿論、寝室には誰も居なかった。
念の為、しっかり施錠されてた窓を開けてベランダに出て、庭や家の周囲を覗き込んだが人が潜んでいる様子も気配も無い。
それで部屋に戻った際に、ふとクローゼットに違和感を覚えたので、俺は「まさか…」と小さく呟きじりじりとクローゼットに詰め寄った。
観音開きと言うのか、内側に引き寄せて折り畳むタイプの扉を開けて新聞紙を振り上げる。
だが、クローゼットの中には誰もいなかったので、俺は「ふーっ」と一呼吸置いて自分を落ち着かせた。

しかし、リビングに戻るなり「誰もいなかったよ」と報告すれば、そこには壁に向かってブツブツ何かを唱えている妻の姿があった。

マジで一瞬怖かったが、すぐに気を持ち直して妻の肩を揺すった。

「おい、妻子?おい!」

「…あ、夫君」

妻はハッと目が覚めたような惚けた顔で俺に向き直った。
そう言えばこんな事が前にもあったなと思い返すと、いよいよ妻が育児疲れで病んでいるのではと疑い始めた。
しかし、こういうのは面と向かって言っていいものか分からなかった俺は、リフレッシュすればマシになるだろうと安易な事を考えていた。

だが、翌日の木曜日の夜、妻がとうとうおかしくなったっぽい。
俺が帰宅すると、この日も電気が点いてなかった。
「またか…」と経験則からそう思った俺は、妻と赤ん坊は大丈夫だろうかと玄関で靴を脱ぎ捨て鞄を放って家に上がり、「妻子ー!」と声を掛けながらリビングに入る。
今回はリビングがもぬけの殻だった。
二人とも何処にいったのかと考えていれば、どうやら二階から妻の声が聞こえる事に気付き、俺は足早に二階に上がった。
二階も当然のように真っ暗だったが、僅かな月明かりに夜目も慣れて寝室が半開きになっていると分かった。
そこから妻の声も聞こえたので、まさかまた何も無い空間に向かってブツブツ言ってるのだろうかと心配は絶えなかったが、意を決して寝室へ踏み込んでみる事にした。

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コメント(1)
  • いや怖いよ

    2022/12/20/10:07

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