奇々怪々 お知らせ

不思議体験

大将さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

姫さん
長編 2023/10/03 03:27 16,576view
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この話は私が小学校低学年の時の話です。
地元の方や、少し詳しい方がいらっしゃった場合直ぐにどこの話か分かってしまうため地名や一部をぼかして話させて頂きます。
その時いわれたことなど方言も翻訳し、言われたこと全部覚えているという訳でもないので所々補填されている箇所がありますがお付き合い頂ければと思います。

まだスマホもなく、ガラゲーが流行り始めた時代。
物心着く前から小学校4年生までの間、九州にあるとある県の限界集落のような所に住んでいたことがありました。
山の中を切り開いたような土地で、『大通り』と呼ばれるところも車が2台すれ違える程の少し舗装された土道があるだけ。
自動販売機も車でいかなければならない距離にしかなく、スーパーは週に2度ほど家族で1~2時間ほど車で行く…そんなド田舎もド田舎です。

そんな場所ですから遊ぶ場所はもっぱら山か山の中の川、もしくは歩いて1時間半ほどかかる学校しかありません。
当時の私は絵に書いたようなガキ大将で
「学校で遊ぶなんてだせぇ、子ども(自分も子供であるにも関わらず年下の子とは子供と呼んでいた)や弱いやつだけ学校行けや」
と言っては当時つるんでいた友人4人と山の中を駆け回る日々でした。

限界集落にふさわしく、子供の数も多くはなかったため一緒に遊んでいた友人は上から4年、私ともう1人が3年、2年と歳はバラけていたものの同じクラスで学んでいるゆえにとても仲が良く、まるで同級生のように遊んでいました。
仲間の中で頭1つ背の高かった私は年上の友人を押しのけリーダー的な立ち位置で、あれこれ指示をしては皆を連れ回していました。

山に登れば、虫を捕まえ、誰が1番高い木に登れるか競い、見つけた縄や木々を使ってブランコを作ったり野生動物を追いかけたり。
いつも遊んでいた山に飽きてきた頃、「イノシシが出るから登っては行けない」と言われている側の方へ度胸試し兼ねて探検にいかないかと私は提案しました。

その山は父が泥酔する度に「あっちは本当に怖ぇ所やけ、二度と行きたくねぇ」とこぼしていた方面で、力も強くヤ○ザの様な強面の父親があんなに怖がる所に無事行けたなら自分たちは大人より強い証明になる、なんてなんとも間抜けな考えでそこに行くことを決めたのでした。

その日は休日で、朝の6時に家を出ていつも集合していた4年の友達の家の前に集合したと記憶しています。
何度か祖父に近くまで連れていってもらったことがあったため、場所が何となくわかる私が先頭にいつもとは逆の山道へと歩みを進めます。
人が普段登っていない山というものはなんとも言えない閉塞感というか、圧迫感というか。
恐怖と緊張の中にある興奮を感じていた私は最年少の2年生の怯える手を引き、上へ上へと登っていきました。
手が加えられていない木々は限界まで伸び、朽ちるものは自然と朽ち、自然に作られたその環境は全体的に湿っぽくまだ日も登りたてということもあり、薄暗い印象でした。
どのくらい歩いた頃か、急に木のはけが良くなっている空間が見つかりました。

周りにはぐみの実がなっており、よく分からないキノコや子どもの手でも折れそうで遊びやすそうな若い竹が生えていました。
私たちは「おやつもある最高の遊び場」と言わんばりにそこの中心部分までかけていきました。

中心部に向かうには少し丘のようになっている場所を四つん這いのような姿勢で登ったのですが、少し上が見え始めた頃、そこに人影のようなかものがあるように思えました。
大人が居たか?マズい、怒られたらもうここに来れない。
そう思った私は口元に手を当て「しぃー」というポーズを取り、後方の友人らを手で制しました。
ゆっくり手元の雑草やら根っこやらを掴みながら上を覗くように登ります。
居ました、大人が。
チラッと見えた頭部は真ん中わけの黒髪で横顔の上半分しか見えませんでしたが正直綺麗とは言えない顔立ち。
眉毛はなく、目はしじみのように小さい女の横顔半分がそこに見えました。
もう少し、もう少し上がるとやっと首まで見るとこが出来、その女性の半分も見えてきます。
納豆のおかめさんを彷彿とさせるようなしたぶくれの顔が全部見えた時、私は失礼ながら吹き出してしまいました。
本当に失礼な話ですが、納豆のパッケージの顔が眉毛を消されてそのまま人間になったようなそんな風に思え面白くて仕方なかったのです。
シン…とした自然の中、私の「グッ」という笑い声が響いたその瞬間。グリン、と女性がこちらに顔を向けました。

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コメント(5)
  • マジで
    姫さん怖すぎやろ

    2023/10/07/12:07
  • 後の吉田沙保里である

    2023/10/07/13:43
  • 久しぶりに怖い話しでした。
    妖怪なのかもしれないですね。

    2023/10/09/14:58
  • チェンソーマン

    2023/10/16/06:21
  • 怖いというより何か物悲しいお話だと思いました。

    2023/10/31/22:53

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