どこまでも追いかけてくる目

霊能者「ぎょろっとした目をしているわね。怖い目だわ、本当に嫌な目をしている」
私「えっ…どうしてわかるんですか？」
霊能者「あなたの背中越しに、私のことを観察しているもの」

そっと後ろを見ると、霊能者の言う通り、あの目がこちらを見ていました。
思わずびっくりした声を上げると、霊能者は「祓うから大丈夫よ、とりあえずこちらにいらっしゃい」と言って、お祓い用の部屋に案内してくれました。
霊能者の落ち着いた態度に、私も気持ちを落ち着けながら後をついていき、言われるがまま部屋にある椅子に腰かけました。
それからすぐ、霊能者のご祈祷が始まりました。
霊能者が何かぶつぶつと呪文を呟くと、部屋の中にラップ音が響き渡ったのです。
そして、あの目がぐるぐると私の周りを回り始めました。
霊能者が何かしたのか、目は、私に触れようと思っても出来ないらしく、近づいては怯えるように離れ、ぐるぐると回り続けます。
どれくらい時間が経ったのか分かりませんが、目は、今度は霊能者の周りを同じように回り始めたのです。

体感で30分くらい経った頃でしょうか。
ラップ音が急に激しくなり、バチィンッ！と鳴って、部屋の電気が勝手に消えました。
日中に霊能者の元へ行ったのに、窓の外の空は不気味な赤色になっていました。
うす暗い部屋の中、目はぐるぐると回り続けています。
あとどれだけ、この時間が続くんだろうと思っていると、霊能者が「ハーッ！」と叫びました。
すると、あの目がピタリと止まり、瞼を閉じて透けるように消えていったのです。

霊能者「祓えたようね…。もう大丈夫、あの目はもう、あなたをつけまわすことはないでしょう」
私「あの目は、結局何だったんでしょうか？私が捨てたから怒って、だからいつも私を見ていたんですか？」
霊能者「あの目はね、人の目よ。あなたに人形を渡した人の目。その人は、あなたに対して強い感情を持っていて、人形に閉じ込めたのね。だから、夢にまで出てきて、捨ててもずーっとついてまわっていたの」

霊能者から衝撃的な事実を告げられ、驚きました。
でも、よく思い直してみると、あの人形の目は、それをくれた同僚の目と似ている気がします。

霊能者からは「もう完全に祓えたので、これ以上つけまわされないだろうし、夢も見なくなるだろうから安心して」と言われましたが、それで終わった気がしなかったのです。
また何か良くないことが起こるのではないか…。
そんな不安を抱えながら、次の日、仕事へ行きました。

出勤すると、あの人形をくれた同僚が、「人形、大事にしてくれてる？」と、話しかけてきました。
捨てたとは言えず、「う、うん…。大事にしてるよ」と伝えると、信じたような信じてないような顔をして、「そうか～」と言いながら去っていったのです。
その日はそれで終わりましたが、翌日も同じ質問をされました。
その後も毎日同じことを聞かれ、私は「怒らせると何をされるか分からない」という恐怖から、誤魔化し続けたのです。

そんなことがありながら1ヶ月経った頃、急に同僚が出勤してこなくなりました。
3日以上、無断欠勤が続き、連絡が取れないということで、上司が同僚の一人暮らしの部屋へ様子を見に行ったのです。
すると、部屋の中には同僚の姿はなく、たくさんの人形があったそうです。
上司がスマホで撮った画像を後から見せてもらいましたが、恐ろしい光景でした。
寝室、リビングだけではなく、廊下や浴室、トイレにまでおびただしい数の人形がありました。
人形は、私が貰った物と同じ見た目をしているものでした。