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不思議体験

筍さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

真っ黒な獣の死骸
短編 2021/02/19 07:53 1,549view

これは私が小学生だった頃の出来事です。

ある日、薪ストーブの燃料にする薪を採るために、祖父が管理する山へ行くことになりました。それまで祖父の管理する山に連れて行って貰ったことなどありませんでした。まして田舎の山に入るなど全く経験が無く、私はとても舞い上がってしまいました。

祖父の運転するバンに乗り込み、半時ほどのドライブが始まりました。酷い車酔いと戦いながら、長い舗装路を抜け、細い未舗装路を入ると、祖父の管理する山の敷地に着きました。

手の入った山とは言え、季節は秋。落葉が地面を隙間なく埋め尽くし、まるで絨毯のようになっていました。私は窓から見える景色に心を奪われてしまい、車が止まるとすぐにドアを開けて外に飛び出しました。

祖父がチェーンソーや鉈を準備する間、私は周囲を一人で見て回ることにしました。白や茶色のきのこ、知らない鳥の声、なんとも言えない木の香り、初めての事ばかりのその山に、それは存在していました。

バンからわずか5メートルほどの木の後ろ、真っ黒な毛皮の獣の頭部が落ちていたのです。落葉の上に落ちていたので、比較的新しい物だったのだと思います。白目の割合の多い目と半開きの口、およそ首があったと思われる場所に見える赤い物、脂っぽい黒毛、紛れもない何らかの獣の死骸でした。私は体が無いことを不思議に思い、少し周囲を探しましたが、肉の破片はおろか、一滴の血痕も見つかりませんでした。その奇妙さを理解すると、私は急に怖くなって祖父の方へ逃げ帰ってしまいました。

その死骸の事を祖父に言うと、狸の死骸だら、と死骸も見ずに言って、全く取り合ってもらえませんでした。

その時から今まで、山に詳しい祖父の言う事だから、と素直に納得していましたが、改めて考えてみるとあれは何だったのでしょうか。図鑑や動物園で見る狸とは明らかに異なっています。野犬か熊か、それとも……。そして何故頭だけが落ちていたのでしょうか。死因も全く分かりません。山は不思議な事ばかりです。

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コメント(1)
  • これはチュパカブラじゃな

    2021/02/19/13:57

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