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不思議体験

筍さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

お盆の不思議な体験 ~木魚~
短編 2020/12/18 16:14 1,964view

これは私が10歳くらいの時の話です.
お盆ということもあり長野の祖父母の家に親戚が集まる機会がありました.私の家族は祖父母と同じ町内に住んでおり,一足先に祖父母の家で集まりの準備を手伝っていました.祖父母の家は四方を田んぼで囲まれ蔵や広い座敷がある,いわゆる田舎の大きな農家という感じの家でした.私たちの地元ではお盆になると,位牌や供え物を置くお盆専用の台を作って座敷に置きます.私にとって普段は滅多に立ち入らない暗い座敷は少し怖いものであり,そこに位牌や木魚などが置かれると何とも言えない神妙な気持ちになったのを覚えています.それでもキュウリやナスで馬と牛を作るのが楽しくてそんな思いは薄れていました.

さて祖母によると,お盆というのはご先祖様をお墓に迎えに行って家で一緒にご飯を食べて,最後の日にお墓に送り届けるものらしいです.お盆最初の日に私たち家族と祖父母でお墓参りをしました.私たち一族は代々農家ですが本家ということもあり,それなりに大きいお墓でした.
そこで墓石を掃除して線香をあげます.ただその時点で漠然とこれまでの墓参りと何かが違うと感じました.ただ単純に線香の慣れない匂いにやられて,おかしくなってしまっただけなのかもしれません.

それでもその後は至っていつものお盆でした.いとこや親戚のおじさんたちと美味しいご飯を食べたり花火をしたりして,THE夏休みという生活を送っていました.
そして15日,お盆最終日の前日の夜に私は祖父母のうちに泊まることになりました.馬鹿みたいに暑かった日中を一気に冷ますような凄い夕立が降った日でした.親戚たちは夕方のうちに帰り,私の家族は夕飯を食べた後町内の家に帰りました.祖父母の家に泊まった時は夜中までテレビを見ることが出来たのでとてもウキウキしていました.この時はそれまでに感じた違和感は完全に頭の中に無かったように思えます.

11頃までテレビを見て,祖母と一緒の部屋で布団に入りました.赤褐色の豆電球が天井に佇んでいてそれを眺めているうちに眠ってしまいました.

それから何時間経ったでしょう.私は変な音で目を覚ましてしまいました.よく耳を澄ますと木魚を叩く音のようです,それも座敷の方向から.でもそんな音がするのはおかしいことです.窓の外はまだ真っ暗で夜中に木魚を叩く風習なんてありません.家にいるのは私と祖父母の三人で,祖母は横で寝ていますし,別の部屋で寝ている祖父もお酒を飲んでぐっすり寝ているようでいびきが聞こえていました.

木魚の音は淡々と同じペースで聞こえ続け,私は恐ろしくなって隣の祖母起こしました.祖母にもその音は聞こえるようでしたが,「こういうこともあるのよ」と言うだけでまた寝てしまいました.さすがに座敷を見に行く勇気は持てず,布団に潜って音を聞かないようにして朝を迎えました.

次の日はお墓参りをして座敷の片付けをしましたが,特に今までのお盆と変わったことはありませんでした.あの木魚の音を聞いたのはその一回きりです.結局祖母にそのことを詳しく聞くことが出来ないまま,祖母は亡くなってしまいました.ご先祖様が叩いていたのでしょうか,今でも鮮明に覚えている恐怖(不思議)体験です.

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