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呪い・祟り

ぴさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

噂の顔面樹
長編 2022/09/06 11:11 3,278view

そして顔面樹の切り倒し作業が行われようとしていた前日に異変が起きたのです。

木の点検をしていて、事務長がひっくり返って骨折をしたという話が会社ですごい速さで広まりました。

そしてその日、生き延びた顔面樹を見に行った社員の一人がまずいものに気づいてしまったのです。

それは顔面樹に浮かんでいる苦悶の顔が一つ増えたという話です。

しかもそれが事務長の顔にそっくりだというのです。

私たちはまさかと思い確認しに行ったら、本当でした。

いつもの顔面の反対側に別の苦悶の顔が浮かんでおり、その顔が事務長そっくりだったのです。

私はこれを見て、事務長が腰を抜かした理由が判明しました。

それでも、ここまでだったら気味が悪い偶然というだけで終わりだったかもしれません。

しかし、話はそれだけでは終わらず、事務長が骨折した数日後に心臓病で突然死したのです。

あまりに突然のことで、会社内はかなり混乱してパニックになりました。

事務長が亡くなってから顔面樹の新しい顔がより一層不気味に見えるようになりました。

本当に苦しそうな苦悶の顔なのです。

私はあまりに怖くて、大嫌いだったあの事務長でも可哀想に思えてならなかったです。

このようなことがあり、顔面樹を切り倒す計画は、まっさらな状態にまで戻りました。

このようなことが実際にあったのです。

さすがに顔面樹の呪いを恐れて、木の切り倒しを進めようとするような猛者は現れませんでした。

事務長と仲が良かった数人はその木を恐れるように会社をやめていったし、次第にみんな顔面樹のことを話題に出すことも減っていきました。

こうして、それ以上顔面樹に手を出そうとする人はいなくなったのです。

そして、それ以来たまに顔面樹からしくしくと人の泣き声が聞こえてくるという噂や午前3時に近くを通りがかった人が苦しそうな唸り声を聞いたという噂話が流れました。

どれにも信ぴょう性はなく、ただの噂だと私は受け止めていました。

いや、ただの噂だと思っていたかったのかもしれません。

けれど一度だけ、こんな私も顔面樹の前で奇妙な体験をしたことがあります。

会社帰りに顔面樹の横を通り過ぎようとしたら、誰か一人のおじいさんがあの木を見上げていたのです。

腰が曲がって杖を突いてはいたものの上品な格好のおじいさんでした。

そしてその老人をよく見たら、ツーっと木を見上げて涙を流しているのです。

いつもはおどろおどろしい気配を感じる顔面樹がそのときだけ神聖な大木のように見えました。

おじいさんはしばらくその木を見上げて、去っていきました。

その人が誰だったのか不明ですが、以前写真で見たことがある生きているほうの創業者の顔に少し似ていたように思います。

私は気になって顔面樹をまじまじと見つめました。

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