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心霊

ちぃさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ある病院の地下倉庫のソファ
短編 2021/12/12 03:02 1,035view
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病院で事務員として働いていた時の話です。

場所が場所なだけあって、職種問わず怖い話はたくさんあり、オカルトが苦手私はそれらを聞くたびにドキドキしていました。

ある日、私は古い資料を探すために、地下一階にある倉庫へ行くことになりました。
その倉庫には、かつて応接室のものだった年季の入ったソファが置かれていて、倉庫に入るとソファから視線を感じる、背中を向けると明らかに人がいる気配がする電話といった話がありました。

事務員のみならず他職種の間でも有名な話で、怖くて仕方なかった私は、仲の良かった上司に頼んで一緒に行ってもらいました。

上司はオカルトを信じない人で、ソファは寄贈されたもので処分しづらいから倉庫に押し込まれたことや、皆があまりにも噂するのでソファは一番奥の棚から死角になる場所に移動していることなどを教えてくれ、「怖いと思い込むな、課長の愚痴でも話しながら探せばいいよ」などと軽口を叩いて、私の緊張をほぐしてくれました。

そしていざ地下一階に着き、上司が倉庫の鍵を開けると、何故か倉庫の電気がついていました。
病院には24時間常駐の警備員が複数人おり、夜も見回りをして、電気がついていれば対応しているはずです。
滅多に人の来ないその倉庫の電気がついているのは不自然でした。

怖気付く私に、「誰かが午前中にでも来てたんだろう」と上司は言い、躊躇いなく倉庫には入っていきます。
仕方なく私も後に続きました。廊下と同じく窓のない空間は、気持ち悪いほど静かでした。
しばらく掃除もされていないらしい倉庫は埃っぽく、今日他に人が来ていた風ではありませんでした。

上司の言っていた通り、棚に隠れてソファは見えませんでした。
私はホッとして、上司と手分けをして資料を探し始めました。

時間にして、ほんの二、三分立った頃、私は強烈な視線を感じました。
てっきり上司がこちらを見ていると思い振り向くと、上司は別の棚の前でファイルを手に取り立ち止まっていました。

私の後ろには棚があるだけでした。
でもその棚の後ろには例のソファがある!──そう思い至った瞬間、悪寒がして、私はすぐに後ろを見るのをやめました。まだ視線は感じます。

ねっとりとした、嫌な視線です。明らかに敵意のような、ネガティブなものでした。

どうしよう、倉庫を飛び出したい、トイレだと言って逃げるか?そう考えていたら、上司が突然、「すみません!お邪魔してます!!」と叫びました。
私に言っているのではなく、奥へ声をかけているのだと察しました。

私はびびってしまい動けませんでしたが、その間も上司は「すぐ終わるので!本を探してます!すみません!」などと大声をあげ続けています。

何分経ったかわかりませんが、やがて上司が資料を見つけ出して、私に目線で「出るぞ」と語りました。
私は小走りで倉庫を出、上司が電気のスイッチを切って「失礼しました!お邪魔しました!」と言いながらドアを閉め、鍵もかけました。

震えながらも急いでエレベーターへ向かい、部署へと戻る最中、私はあれがなんだったのか聞けずに黙り込んでしまいましたが、人がたくさん行き交う一階に着くと、上司が安堵の表情で「いやー、怖かったなー」と笑いました。私は全く笑えず、愛想笑いもできません。

「お前が怖がると思って言わなかったけど、俺も新人の頃にこうやって先輩に助けてもらった」と語る上司に、「ほんとだって知ってたらなんで教えてくれなかったんですか?」と恨み言を言うと、上司はなんとも言えない顔で、「行ったことないやつを連れて行かないと、『本気で怒る』から」と言いました。

「え、怒ったらどうなるんですか?」

私が恐々とそう尋ねると、上司は苦い顔になって「俺が知る限り、四人ここを辞めた」とボソリと呟きました。
「そのうちの一人はここの系列の精神病院にいるよ」

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