誰もいないはずの更衣室で

これは私が病院の事務で勤務していた頃のお話です。

その日は入院患者様が多い日でバタバタしており、残業していました。事務所に残っているのは私とその日の管理当直の2人で「今日は忙しかったね〜」なんてたわいのない話をしていました。

時刻は20時を回っていました。そろそろ帰ろうと思い事務所を出て院内2階の更衣室へ向かう途中、霊安室の電気がついており、看護師の方がバタバタと準備をしていることに気が付きました。どうやら緩和病棟の患者様が亡くなられた様子でした。

うちの病院には緩和病棟があるので、こういうことは何度も経験していますが、その日はなんとなく怖い感じがしました。

更衣室の前まで来ると、ドアのガラスごしに中が真っ暗であることが確認できました。普段は夕方に勤務が終わるため、更衣室は基本的に勤務終了したスタッフでがやがやしているのですが、この日は私1人のようでした。

(早く着替えて帰ろう…)そう思いロッカーを開けて着替え始めました。携帯を見ると地元のグループLINEの通知がたくさん来ていたため、先程の恐怖感もすっかり忘れてLINEの返信に夢中になっていました。10分くらい経ったでしょうか、着替えも終わりロッカーを閉じて帰ろうとした時、「キィー…カチャン」と私のロッカーの数列後ろでロッカーの扉が閉まる音がしました。びっくりしましたが、(あ、なんだ、誰かいたのか…)と思いそのまま更衣室を出ようとした時に気付きました。(え…？私入ってきた時、更衣室は真っ暗だったよね…？)その瞬間とてつもない恐怖感が襲ってきて、急いでその場をあとにしました。

数年経った今、この話を当時の同僚に話すと、更衣室での奇妙な体験は私だけでなく他のスタッフも体験していたようです。

現在は退職していますが、今でもロッカーが閉まる音を聞くと当時の体験を思い出します。