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不思議体験

交換日記
短編 2021/06/05 01:39 970view
実家がリフォームすることになり、私の部屋に残っている荷物でいらないものを処分するように母親から連絡がきた。
ここのところ仕事とプライベートで忙しく、帰省できていなかった私は、久々に週末に実家へ帰ることにした。

家に着いて両親に近況を伝え、昼食をとった後、2階の私の部屋に入った。部屋は5年前に出ていった頃と殆ど変わらないが、掃除は行き届いてきれいだった。
クローゼットや本棚の中の分別が終わり、残すは机の中だけとなった頃には、もう夕方になっていた。

机の引き出しを開けると、書類やら文房具やらがぎっしり詰まっている。いらないものしかないだろうと思いつつ、引き出しを全部引っ張り出して床に置き、中身をひとつひとつ取り出した。
大学生の頃まで使っていた机だが、中学時代に撮ったプリクラや、小学校のプリントまで出てきた。
そして、それらに埋もれた一番奥に、一冊の古いノートがあった。ハイビスカスの写真が表紙の、学習帳だ。

ノートを見た瞬間、私の脳裏に様々な記憶が呼び起こされた。近所に住んでいたともちゃんという同い年の女の子のこと。ともちゃんと保育園、小学校と、いつも遊んでいたこと。そしてこのノートで、ともちゃんと交換日記をしていたこと。

どうして今までともちゃんのことを忘れていたのだろう?あんなに仲良くしていたのに!
私はノートを持って両親のいる一階のリビングに駆けていった。

「ねぇ、昔近所にともちゃんって子、いたよね?」
私がそう言うと、母は怪訝な顔をしつつ
「あー、いたわね」
とだけ言った。
「ともちゃん、まだこっちにいるのかな?」
そう言う私に、母は眉をひそめて答えた。
「あんた覚えてないの?ともちゃん、小学3年か4年の頃に行方不明になったじゃない。ご家族もその後どこかへ引っ越して行ったわよ?」

私は愕然としたが、先程に続いて、記憶のしまわれた箱が開いていくような感覚に襲われた。
そうだ。小四の夏休み前、私は下校中に交換日記をともちゃんに渡し、また明日ね、と言って彼女と別れた。それが、ともちゃんと会った、最後になったのだ。
翌日学校でともちゃんが家に帰っていないことを先生から伝えられ、私は驚きつつ昨日もともちゃんと一緒に下校したことを話したのだ。

鮮明に蘇った記憶、その中に私は違和感を覚えた。
確かにあの日、私は交換日記をともちゃんに渡して別れたはずだ。20年近く前のことだし、思い違いもあるだろう。だが、彼女に交換日記を渡した時の、蝉の鳴き声、彼女の笑顔、手を振りまた明日ねと言ったこと、それらがあまりにリアルに思い出されたので、私は咄嗟に手に持っていたノートを見た。
このリアルな記憶が間違いじゃないとしたら、じゃあ何故私の部屋にこれがあったのだ?
私は夢中で、最後に日記の書かれたページを捲った。

そこには赤いインクで大きく


あなたもはやくこっちにきてよ


と、殴り書きされていた。
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コメント(1)
  • こういう子ども時代の朧げな記憶が絡んでくる怪談は妖しさとノスタルジックな雰囲気がマッチして好きです

    2021/06/19/17:55