だから私言ったよね？

一週間前僕の弟が亡くなった。

バイクの事故だった

最後の肉親の弟が死んでしまい

僕はうちのめされていた

翌日は通夜だったが飲まずにはいられなかった。

潰れる一歩手前まで飲んだ僕はスーツ姿で居間で眠りに落ちてしまったようだった。
　
どれくらい時間がたった頃だろうか、何かの気配を感じ僕はうっすら目をさました

暗闇の中が僕が目を凝らすと僕から２、３メートル離れたところで誰かがブツブツ呟きながらウロウロしていた

ん？一体誰だ？

酔っ払って朦朧とする意識の中、目と耳を凝らして集中すると

「だから私言ったよね？」
「だから私言ったよね？」

と聞きなれた女性の声が聞こえてきた

それは妻、玲子の声だった。

「私以外に愛する人いたじゃない」
「だから私言ったよね？」
「これでやっと二人きりになれる」

え….?
なにを言っているんだ？

「もういないよね愛している人？」

一人でブツブツ呟きながら相変わらず僕の２、３メートル先をウロウロしている

その時妻の手元で何かがキラリと光った

包丁だった。

「ひっ」

思わず口がら声が漏れると

ぴったっと彼女の動きが止まって

静寂が訪れた。

僕は反射的に目を閉じ

眠ったふりを続けた。