【short_09】ハァハァ電話

ずっと以前に働いていた事務所でのことです。

当時の会社は平均年齢が非常に低く、事務や営業アシスタントの女の子は全員ピチピチ(死語)の２０代前半。営業マンですら３０代。部長でやっと４０代~みたいな、とにかく若者、とくに女性が多い職場でした。

そのせいなのか、ある時からイタ電が入るようになったのです。
しかもいわゆる「ハァハァ電話」
たぶんですが、ウチの若い女の子たちの対応する声が聴きたくてかけてくるんです。

普通はそんなのガチャ切りだと思うんですが、なんというか、若いというか根が明るいというか、ある女の子が「もぉ～、早くしなさいよ!!」なんてやったもんだから、事務所内では爆笑の渦。

が、それで勢いづいたのか、ハァハァ電話は毎日のようにかかってくるようになって、
逆に調子づかせた女の子のせいだ、みたいな雰囲気になってしまいました。

そんな時、またあのハァハァ電話の主から電話がかかって来て、例の女の子が電話を取りました。でも、この時はちょっと雰囲気が違いました。電話の向こうでしくしく泣いているのです。

「オレ・・・もうダメ・・・死にたい・・・死ぬ・・・これから死にます・・・自殺する」

そこで女の子は改めて彼にこう言いました。

「もぉっ!!、早くしなさいよ!!」