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妖怪・風習・伝奇

kanaさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

【鬼ぃちゃん事件】-事件記者 朽屋 瑠子-
長編 2023/10/06 05:24 10,529view
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「あんたがクッチャさんかい。いろいろ世話になったらしいな。話は聞いてるよ」

「申しわけない。結果として、あなたの左腕を飛ばし、多くの方を死なせることになってしまいました。・・・組長さんも、桐原さんも・・・。本当に申しわけない」

「顔を上げてください。俺たちは極道を歩んでいる以上、みんな死ぬ事なんざ恐れちゃいねぇ。ただ・・・相手が悪魔だの魔物だの・・・この世ならざる者の類にやられたとあって、いったいどう落とし前をつけりゃいいのか・・・それに、犠牲が出たのはあんたのせいじゃねぇ。元はと言えばオレのせい・・・」

「ちがう・・・元はと言えばボクのせい!」そう言う九郎の言葉を遮って若が続ける。
「いや、九郎を助けたくて助けたのもオレ。すべてはオレの行動からなんだ。俺たちは触れちゃいけない物に触れた・・・そうだろ、クッチャさんよ」

朽屋はだまってバッグの中から一本の白鞘のドスを取り出して若に渡した。

「これは・・・?」

「先代組長からお預かりした家宝の『小豆長光(あずきながみつ)』ですが、残念ながら魔物との戦闘で折れてしまいました。これはせめてもの償いです。折れた『小豆長光』を砥ぎなおして作った短刀です。どうかお納めください。・・・悪魔を切ったこの刀には、魔除けの効果が付随されています。きっとお役に立つことでしょう」

「すまねぇ。ここまでしてもらって恩に着る。これを新しい家宝とするぜ・・・そうだ、小豆長光を砥ぎなおしたこのドスを、『小豆砥ぎ』って名前にするぜ」

「フハハ」「ぷっ」思わず吹き出して笑う誠一と朽屋であった。

病室を出る朽屋と九郎。廊下を歩きながら九郎が話しかけてくる。

「へへ、なんだか姐さんと若、いい感じでしたね。どうです?カッコイイでしょ?若」

「えっ?九郎・・・もしかして私と若をまだ結婚させようとか思ってるの?」

「えへへ、バレたか。でもお似合いじゃないっすか?結婚・・・考えてくださいよ~」

「バッカねぇ九郎も。わかんないの?若が本当に好きなのは、九郎、あなたの方よ」

「えっ!?」突然のことに顔が真っ赤になってモジモジしだす九郎。「そ、そんな」

誠一にずっと抱き着いていた九郎には見えていなかっただろうが、誠一の失われた左手は、ずっと九郎の背中を愛おしそうにさすっているように朽屋の目には映っていた。

「どっかご飯食べて行こうか、九郎」 

「じゃあボクがご案内します!」 渋谷は九郎の庭である。24時間賑わっている渋谷の町も、一歩裏通りに入ると急に静かになる。九郎は一軒のバーに朽屋を案内した。

「ここお酒飲むとこじゃん」

「大丈夫です。ここ食事も出来て、ポーチドエッグカレーがうまいんですよ~」

「へぇ~。あんまり聞かないよね、ポーチドエッグとカレーなんて」

店内に入るとマスターが挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ・・・あぁ、どなたかと思えば九郎さんじゃないですか!」
どうやらバーのマスターと九郎は知り合いらしい。
ただ、今日の九郎はいつものジャージではなく、女の子らしい姿をしている。
一瞬ちょっとびっくりした表情をしたのはそのせいだろう。

「姐さん、何飲みます?」

「うーん、それじゃあ・・・グレンモーレンジをハイボールで」

「うわっ姐さん、なに通ぶってんですかー。じゃあボクはモスコミュールで」

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コメント(7)
  • kamaです。朽屋瑠子シリーズ第12弾は、前回の「赤騎士事件」の流れを汲みながら以前公開した【鬼のいる街】という作品の解決編ともなっています。今回はアクションも多いので、マンガ的に楽しめるのではないかと思います。よろしく~~

    2023/10/06/05:50
  • 瑠子シリーズ大ファンの地方在住者です。赤鬼のお兄さんと妹の香織ちゃん、某アニメを彷彿させるようで感動しました。九郎ちゃん♀と瑠子のバディ、これからも期待しています。

    2023/10/06/18:45
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。いつもありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか。多分この後、組織は綾辻兄妹をスカウトするんじゃないですかね~。またいつか再登場する日も来るかもです。ちなみに、朽屋愛用のマグカップについてですが、実は第一話ですでに登場しております。三連休ヒマだ~という方は、ぜひ朽屋瑠子シリーズ読破してみてください~~~

    2023/10/07/05:44
  • 10/7(土)21:00 渋谷区道玄坂のスクランブル交差点で暴走車が7人を撥ねる事故。
    朽屋瑠子で渋谷が舞台というので、なにかあるだろうなとは思っていたが。

    2023/10/08/06:05
  • 何と!死んだはずの赤い馬が調教されカプセルに封印されていたとは。

    2023/10/10/02:47
  • ↑kamaです。そうです。朽屋はこれでケルベロスと赤い馬の2頭を使い魔として使役することになりました。カプセルの描写は、もちろんウルトラセブンのカプセル怪獣のオマージュです。もう何体か欲しいですね。

    2023/10/13/19:32
  • その事件って本当にあったんですか?違うならKamaさん天才ですね

    2023/11/28/11:59

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