「へっこまん」※犬神信仰

　へっこまんは犬神の障りにあっていた。何をしても大事にならず、警察も動かなかったのは、この地方に犬神の障りの恐ろしさがいまだ根強く残っているためだそうだ。よく思い出せば、当時両親や学校の先生に、へっこまんには関わるなと強く言われていた。みんななるべく関わらないように努めていたのはその為だったのだ。

　そしてあの時Aが見たのは、へっこまんの後ろにいた黒い犬だそうだ。犬は目玉が人間のような目をしており、ギョロギョロとこちらを見ていたらしい。あの目を見てしまうともう駄目らしい。Aの家に来たお坊さんもなんとかしようとしたが、お坊さん自身重篤な病に侵され、今も寝たきりだという。

　Aはそれに向けてエアガンを撃ったのだ。

　Aは家族と共に四国を離れた後、精神病院に入ったらしい。そこでしばらくして憤死してしまったそうだ。その後すぐに後を追うようにAの両親も心中した。Aの病室には黒い犬の置物があり、両親の家にも犬の人形や置物が山ほどあったらしい。

　父は「A君に感謝しい。全部持っていってくれたんや。」と言った。
　エアガンを撃ったことで犬神の標的がAになった為、私とBは助かったのだそうだ。
　私はAの十字架を一生背負って生きていくつもりだ。

　最後になぜ、へっこまんなのか。

　へっこまんは生前何度も犬神を作ろうとして失敗していたらしい。その時失敗した犬がへっちょむいていた（四国の方言であさっての方向を意味する）事から訛ってへっちょまん→へっこまんとなったらしい。
（詳しいことは犬神の作り方と関係している為多少ぼかしを入れている。）