奇々怪々 お知らせ

心霊

ぴさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

私にしか見えない人
長編 2023/04/07 12:10 5,046view
1

間違って話しかけでもしたら、憑りつかれてしまうかもしれないという恐怖のためです。

幽霊が出る職場なんて絶対に嫌だと思っていた私ですが、せっかく採用されたこの職場を離れるのも嫌だったのです。

人間関係も良好だし、仕事もそれほど忙しくなくて、私にとってはもう楽園としか言いようがない職場でした。

前の職場をクビになったトラウマもあり、その人が見えていることは絶対に隠してやり過ごそうと思ったのです。

その職場で偶然聞いた話なのですが、ここは毎年誰かが辞めていくのだそうです。

こんなに環境がいいのになぜ辞めるのかみんな分からないと不思議がっていました。

私はその話を聞きながら、ちらちらとそちらを見てしまいました。

窓の近くで外を眺めているあの人です。

私はその話を聞いていて、ずっとこの人が原因なんじゃないかと考え始めたのです。

働き始めて1か月近くが経過した頃、私はだんだんとその幽霊らしきものに慣れてきました。

窓から全然動かないし、とにかく見えないふりさえしておけば、身の安全は確保できると思ったからでした。

私にしか見えない人はそれまで窓の近くからぴくりとも動きませんでした。

だから安心していたのです。

しかし、その日は違いました。

朝職場に行くと、私が一番乗りで職場に到着しました。

仕方なく鍵を開けて室内に入ると、窓の近くにあの人がいなかったのです。

きょろきょろ見回したけど、私にしか見えない人はどこにもいなかったです。

朝早いといないのかと思い、内心ほっとしつつ、シャーっとカーテンを開けました。

明るい日の光に、室内がポカポカするような気がしました。

けれど、その次の瞬間に後ろに人の気配を感じて、ギクッとしたのです。

間違いなく、後ろに誰かがいる気配がしました。

それは今までなかったもので、コツコツと足音がし、誰かが窓の近くに近づいてきたのが分かりました。

振り返ったら確実にその人がいると私は分かったのです。

私はそっと後ろに下がって、そのまま見ないふりでその人をスルーしようと思いました。

下向き加減で、見てないふりをして通り過ぎたら大丈夫と自分に言い聞かせました。

しかし、それはうまくいかなかったです。

私がその人を素通りしようとしたときに、すぐそこの至近距離で「見えてない?」て聞かれたのです。

思わず、私は怖くて立ちすくんでしまいました。

顔からだらだらと汗をしたたらせ、真っ青に青ざめていたと思います。

そのまま顔を上げると目の前に立っているくらいの距離なのです。

2/3
コメント(1)
  • 怖いです。自分だけが見えるなんて。

    2023/05/17/06:04

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。