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心霊

ぴさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

奪い愛
長編 2022/11/08 19:01 3,637view

彼の話では自分が荷物を持ってあげると言ったら、「いいよ持てるから」とやんわり断られたらしいです。

あまり自分に甘えてくれなくて寂しいと彼は言っていて、なんだか意外でした。

電話の感じから我がままで、彼の恋人が相手に気を遣うイメージがなかったからです。

絶対に彼の前で猫かぶっていると思ったし、そういうところも嫌いだと思いました。

彼と長々と話をしていたら、急にすぐ傍から「まぁくん」と甘えた声が聞こえてぎょっとしました。

私はその甘ったるい声に「え、今誰かいるの?」と驚いて彼に聞いたのです。

明らかに女の声が至近距離から聞こえました。

それなのに彼は「え、今家に一人だけど」と言ったのです。

さきほど聞こえた甘い声は絶対に女と思いました。

あんな声を出すなんて、恋人しかいないと思ったのですが、彼にうまくはぐらかされてしまいました。

彼との電話が終わったら、すぐに着信が鳴ったのです。

見るとまた非通知で電話がかかってきています。

すぐに電話に出ました。

案の定、彼の恋人からの電話で、「もう二度と電話しないで」と言われて、また一方的に電話を切られました。

怒りが沸き上がるくらい自分勝手だと思いました。

ますますこんな女に彼を渡したくないと思ったのです。

彼を奪うためにどうしたらいいのかと私は考えに考えました。

そして彼が「最近彼女が冷たくて、俺より仕事を優先する」と愚痴られたときに、その心の隙間を狙おうと思いました。

「寂しいときはうちに来たら?構ってあげるよ?」などと、冗談めかして言ってみたのです。

少しでもつつく隙間があるならと思ってのことでした。

彼のほうは「やっぱ優しいね」と喜んでいたようでしたが、当然のように「恋人に悪いから」と断られました。

彼の話す恋人像と私が直接話した恋人には、共通点がまるでありませんでした。

まるで別人のようだと思ったことが何度もあるし、かなりイメージが違いました。

それでも私はこのズレは恋人が彼を夢中にさせるために使っているテクニックのせいだと思っていたのです。

あまり彼に気がないふりをしておいて彼を自分に夢中にさせ、その隙に彼に近寄る私のような邪魔な人間を排除しようとしていると思いました。

そんなときに、街で偶然彼らを見かけたのです。

初々しい感じで、隣を歩く二人を見ました。

彼女は私よりも若くて可愛い子で間違いなかったです。

ただ想像とは違って、くっつきたがっているような素振りの彼に「恥ずかしいから外ではやめよう」と彼女のほうがきっぱり断っていました。

私は電話のイメージと違いすぎる女性に少しだけ違和感を感じながら彼に声をかけました。

2/4
コメント(1)
  • ひきこまれました。文章もうまいです。

    2023/05/14/20:07

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