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ヒトコワ

GENGOさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

監禁通報
短編 2022/09/29 10:35 11,424view
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それから数日後、Aの部屋の電話が鳴った。
出てみると相手は若い男性のようで
「山田(仮名)と申しますが、そちらの佐藤花子さん(仮名)を
お願いします。」
と言ってきた。
当然に
「佐藤なんて人はここにはいない」と答えたのだが、
相手は電話を切らない。
それどころか
「本当にいないのか?」
などと聞いてきた。それだけでなく
「あなたの名前は」とか「そこはどちらですか」
などとも続けて聞いてきた。
Aにしてみれば不信きわまりない電話なので、
何を言っているんだ、そんなことを答えるわけがないだろ、

なんの根拠と目的でそんなことを聞いてくるのだ、
と殆ど怒鳴りつけたらむこうから電話を切られた。

あまりに不信な電話だったので、Aも
これは先日の監禁通報と関連しているのでは、と考えた。
状況から推測すると、
どこかに誰かから逃げている佐藤という人と、
佐藤を追いかけている誰かが居る。
追いかけている側は佐藤の電話番号(実際には間違い)
しか手掛かりになるものが無い。
なのでとりあえず警察に
「この電話番号(Aの自宅)のところに監禁されている人が居る」
と通報してみた。
結果、なんの進展も生まれなかったので直接電話してみた。
そんなことのように思われた。

当時はオウム事件が社会問題として表面化する前だった。

これがオウムの件が表面化したあとならば
それこそオウムの出家信者がどうとか脱会信者がどうとか、
何かカルトな集団が絡んでいる話かと推測したのだろうが、
そのころは社会の裏にそういう動きもあるとまでは
一般的には認識されていなかった。
なのでAも
「世の中にはなにか怪しい世界もあるようだな」
くらいにしか想像できることが無かった。
ただ、普通に行方不明の肉親を捜しているとかなら
もっと正々堂々と接してくるだろうし、
借金絡みとかで逃げている人とかがいて
それを追う人がいて動いて電話で探りを入れてきたとかならば、
もう少しヤクザや金貸しっぽい話をしてきそうなものだ、
というくらいにしかAには推測できることはなかった。
そしてまたその想像が当たっていようが外れていようが、
当面、Aに出来ることやすべきことは何も思いつかなかった。

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コメント(1)
  • オウムはサリンとかの前から結構こういう問題が話題になってましたからね…
    日本中で同じようなことがあったのかもしれませんね

    2022/09/29/11:31

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