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ヒトコワ

GENGOさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

鉄骨渡り
短編 2022/10/14 18:13 3,621view
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ギャンブル漫画の人気作「カイジ」のなかで「鉄骨渡り編」という話がある。
大金のために命懸けで高さ何十mという高所で平均台渡りのような死のゲームに挑む話。
最初にこの漫画を見た時の私の感想は
「あ、これ子供のころにやったわ。」だ。
子供って怖いね(笑)。

小学生時代、私はそこそこの山里の村で育った。
村は大きな川に面しており、その川には対岸の村との間を結ぶ
大きくて長い橋がかかっていた。
大きいと言っても何十年も昔に架けられた橋なので
車が一台だけ通過できる幅しかなかったが、
長さは100m以上、川からの高さは15mくらいはあったと思う。
当時に通っていた小学校が3階建てだったが、
その屋上よりも確実に高いところを通っていた橋だったし。

橋は一見するとつり橋だったが、
(というか補助的に吊る構造にもなっていただろうが)
実際には川を越えて両側の山すそに鉄骨が撃ち込まれて
支柱としてささえる架け橋になっていた。
そして大まかにいえば、その鉄骨の支柱の上にV字状の鉄骨が
2から3mくらいの等間隔で直立して取り付けられて、
その上に橋の通行帯部分が載せられている作りだった。
つまり、本来の橋の下に長さ100m以上の細い鉄骨の橋が
かかっているようなものだった。
石ころだらけの川原の上、十数mの高さのところにだ。
そして対岸の橋の根本は切り立った断崖に鉄骨が撃ち込まれていたので
近寄ることもできなかったが、自分たちの村の側は
やや緩やかな山の斜面に鉄骨が撃ち込まれていたので、

歩いてまわりこんで、橋の下に潜り込んで、
秘密の「平均台遊び」をすることが可能だった。

多分、けっこう昔から村の子供たちは大人たちにばれないように
平均台渡りをして遊んでいたと思う。度胸試しとして。
最初の橋の根元から数m先までいくくらいはなんともないのだ。
傾斜のある山裾からのびている平均台は、当初は山裾に密着しており、
ジョジョに山裾の傾斜によって地面から離れていく。
たぶん10m先でも高さ1mくらいだったと思うが、
そこから先は山の傾斜が急になるので平均台も一気に高くなっていく。
20mも先に行けば、山裾は途切れて完全に下は石ころだらけの川原になり、
高さは15mくらいになる。
その先は100m先まで鋼鉄の平均台だ。
落ちれば少なくとも大けが。死ぬ可能性も高かった。
当初は、というか数年間は、どの子供も数m先までしかいけずに
「無理だあ」と飛び降りて事なきを得ていた。当たり前だ。

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