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心霊

apamtさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

かなしばり
長編 2022/09/03 08:30 1,483view

血の気なく、体温すらなさそうな手がゆっくり這いだしてくるが映像で見えて、なんとかしなければ本当に危ない、と初めて金縛りに対して恐怖を覚えました。

しかしさらに頭に流れてくる映像は恐怖でしかなく、まだ見えているのは手だけなのに直感的に「少年だ」とわかり、それが伝わったのかは分かりませんがその生き物がこちらに向かって笑いかけてきた感じが伝わってきました。

ベッドの下、しかも電気はある程度消してあるのでほぼ暗闇のなかでも、しっかりと「笑った」ということが分かるのはかなりの恐怖でした。

このままいつものように寝落ちをしてしまったらどうなるかわからない、という恐怖の中で動かない体を必死に動かし、出せない声を必死に振り絞っていました。

しかし金縛りが解ける気配はなく、頭に流れてくる映像も相変わらずだったため、なんとかしようと思い付いたのがお経を読む、という対処法でした。

とはいっても、私自身お経を完全に言えるわけでもなくむしろ幼少期に祖母が仏壇に向かって唱えていたお経をリズム的になんとなく覚えているだけ、の状態であったため効果があるは定かではありませんでしたが、なにもしないよりかは良いかもしれないと思い、覚えている部分だけをひたすら繰り返すという形でお経を心の中で唱え始めました。

唱え始めて何回か経った頃、ふっと意識が軽くなり、頭の中で流れてくる映像も途切れました。いつの間にか身体も動かせるようになっており、声も出せるようになっていました。

そのあとはよく覚えていませんが、体力的にも精神的にも疲れてしまったのかおそらくそのまま眠ってしまったと思います。気が付いたら朝でした。

チェックアウトの時間間際になり、見るのを避けていたベッド下を思い切ってのぞいてみましたが、特になにもなくせまい空間が広がっているだけでした。

入室した直後から気になっていた、絵が飾ってある額縁に関しては本当に気になったのですが、そこは見てはいけない気がしてそのままそのホテルを去りました。

手が見えていただけで、全体が見えたわけでもましてや私が身体を動かしてベッドの下を直接探しに行けたわけでもないので、私の頭の中に流れてきた映像は夢だと言われればそれまでかもしれませんが、あの時間は間違いなく私の人生の中で一番恐怖を感じる時間となりました。

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