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不思議体験

アマリリスさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

不思議の国のアリス症候群
長編 2022/03/09 07:50 38,610view
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某県の山中に4人乗りの軽自動車を走らせて、私達四人はキャンプに向かっていた。
深緑が広がる最奥には、古いが設備の整ったキャンプ場があって、近場には渓流で魚釣りも楽しめる。

「誰もいねえな」
「まあ、平日だし、そんなもんでしょ」

到着するなり荷解きしながら男共が感想をこぼす。
キャンプシーズンもないただの平日にこんな廃れた辺境にくる物好きはいない。
まあ、私達はその物好きであるが。

メンバーは、私とA子の女子二人と、CとDの男子が二人の計四人。

A子が意中のCと仲良くなりたいからと、同じゼミのDを仲介してCを誘い出したというわけだ。
Cは愛想の良い人気者タイプで、ドラえもんで例えるとジャイアンの社交性と出木杉君の忖度ない分け隔てなく接する姿勢を混ぜ合わせたような、学部でも評価の高い男。

そんなCとの恋愛競争は苛烈なものだが、彼女を作っていないことからあまり恋愛事に縛られたくないのではと、私は思っている。

キャンプ道具一式の準備を男達に任せ、私達はご飯の準備をこなす。

そのついでに周辺の環境調査も兼ね、焚火にくべる枝収拾に繰り出す。

「ねえ、あまりがっつくのもCにマイナス評価じゃない?」
「えー?早くしないと他の人にとられるし」

山中にしては不釣り合いな脚線美を見せたA子が、白い細腕で土のついた枝を拾いあげる。

A子はそれなりに容姿がよく、成績も良い方だ。
ただ、若干恋愛癖がこびりついているせいか、よくドラマや小説の影響を受けては一風変わったアプローチをしたりして、何れも一ヶ月と経たず破局。

特段性格が悪いわけでもないし、我が儘でもない。
ただ単にめんどくさいときが多く、四六時中一緒に過ごした歴代彼氏達は、A子の束縛や価値観に嫌気がさしたと見ている。

まあ、女友達の私には異性に向ける束縛欲などなく、至って普通の友達として上手くやっているし、何なら親友と呼んでも差し支えない。

「準備できたぞー。腹へったから早く飯にしようぜ」

広場へ戻ればレンタルだが立派なテントが立っていて、石積で囲った即席のコンロや、飯盒の下準備も終わっていた。
キャンプ場といっても使用許可を与えられただけの名ばかりな土地であり、設備なんてのは洗い場として活用できる水道とトイレだけだ。

後は利用者が持ち寄った道具を使って本格的なサバイバルが楽しめるだけの、言うならば、自由な一時を過ごしたい客層に向けたキャンプ場。

ゴミ捨て禁止等の当たり前なルールは一緒だが。

「じゃーん、和牛!」
「すげえ。でも高かったんじゃ?後でお金出すよ」
「いいって、車とかレンタル代と出してもらってるし、食料は私達に任せて」

道中も久留麻の中で一度同じやり取りをしたが、Cは何度も私達を気遣い言葉にする。
そういう細かいところがモテるポイントに繋がっているのだろう。

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コメント(2)
  • ファンタジー読んでるみたいで面白かったです

    2022/03/09/09:29
  • 読み応えがありましたが、本当に不思議な話ですね。

    2022/09/26/09:52

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