一番怖いのは

「こら！　暴れるな！」

怒号が聞こえてきました
やはり誰かがいたようです

これは後でわかったことですが、誰もいないはずのその部屋に中年男性が寝ころんでいたようです

その男性はどうやらクスリをやっていて、警察が突入した時は、かなり錯乱した状態で、大暴れだったようです

その男の正体はアパートの管理人の息子さんだったとのことです
クスリはかなり前からやってきて、警察から逃れるために隣の部屋を無人ということにして、管理人さんがかくまっていたようです

この時点でかなり怖いのですが、一番怖いのはあのカンカンという音

あれは包丁で壁を叩き削る音で、かなり壁が壊されていて、あと少しで穴が開くところだったようです
つまり、隣の部屋の狂人が壁を壊して私の部屋にやってくる寸前だったのです

すぐに私は引っ越しました
これまで数多の心霊現象に遭遇しながら、それが理由で引っ越したことはなかった私がです

やはり一番怖いのは幽霊じゃなくて、生きている人間ですね

幽霊なんてかわいいもんですよ
大抵、突っ立ってるか声出すか音鳴らすかですから