売れない人形

これは俺が体験した話

俺は小物グッズを集めるのが趣味で、小物グッズを扱うショップを休日に巡るのが習慣だった

可愛いものからかなりマニアックなものまで

世の中にはありとあらゆるグッズがあって、そういったものが並んでいるのを見ているだけでも楽しいものだ

そんな中で最近気になるものがあった

街外れの小さなお店にあるお人形だ

手のひらサイズの可愛らしい女の子のお人形
白いドレスに長い黒髪
顔はアニメ顔で黒い点の目が可愛らしい

最初はそこまで欲しいとは思っていなかった

ただこの人形、ずっとそのお店にあった

そのお店は他のお店にはない変わったグッズを売っている個人経営のお店で、数年前から通っているのだが、最初からその人形はあった

店の奥にひっそりと置いてあった

誰も買わないのだ
それなりに繁盛している店なんだ
でも、誰も買わない

普通ならそんな売れない商品、いつまでも売り場に置いておくなんてことはしない

店主さんのこだわりでもあるのだろうか
周りの商品がどんどん入れ替わる中、その人形だけはずっとそこにあった

最初はまったく気にならなかった

どこにでもあるような人形だ

だが、何度もお店に行くにつれ、だんだん気になってきた

最初はいつまでも売れないことに対しての哀れみ
やがて、それは愛着に変わる

店に入ったら、まずその人形がまだあるのかチェックするようになった

これである日、この人形が売れてしまったらきっと落ち込むだろう

なら、やることは一つだ

俺はある日、その人形を手に取り、それをレジまで持って行った

「こんにちは　今日は何を・・・　ん？」

いつも穏やかで笑顔を崩さない店主さんの顔が少しかげった