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不思議体験

yumyさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

お見送りしてくれるおばあさん
短編 2020/12/31 11:34 2,439view
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私は他の人が感じられない何かを感じ取ることができる体質をしており、小さいな頃から不思議な体験、恐い体験をしてきました。自分がみているものが他の人には見えないということは、物心ついたときには何となく感じていました。

幼い頃に体験したことで、私が今だにゾッとする体験。それは、登下校にいたおばあちゃんです。私の家は学校から離れていて、途中まで登下校は一人きりでした。いつものように学校に向っていると、おばあちゃんが家の前で立っていて、「おはおよう」「おかえり」と挨拶してくれるようになったのです。私の中でそのおばあちゃんはいつの間にかお見送りばあさんと呼んでいて、一人の登下校も寂しくありませんでした。

毎日、お見送りをしてくれるおばあちゃん。雨の日も絶対にそこにいます。傘もささずに。それでも幼かった私は、あまり気にはならなかったのです。おばあちゃんのお見送りは長い期間続きました。雪が積もっていた日、厚着をして登校していたのですが、おばあちゃんは薄着で「おはよう」と声をかけてきたのです。思えば、いつも同じ服。もんぺのようないかにもおばあちゃんの服のデザインなんて気にしたことがなかったのに、その日は夏のような格好のおばあちゃんが異様に感じたのです。

これまでは挨拶しか交わしたことがなかったおばあちゃんに「寒くないんですか?」と声をかけると「あついくらいだね、あつい、あつい」とにやっと笑ったのです。目は笑っていないようなその表情に、ゾッとして学校まで急ぎました。あのおばあちゃんは毎日何をしているんだろう、こんな寒い日にあついなんて。その日、私はお見送りばあさんの前に行くのがとても恐かったですが、そこを通らなくては帰れません。おばあちゃんはいつもの場所に立っています。雪が積もっている道に、薄着で。私には気がついていないかのようにそっぽを向いていましたが、私の足音に気がついたのか、そっと振り返ったのです。

「おかえり」その瞬間、私は息が止まったのかと思いました。いつものおばあさんの顔ではありません。顔は焼きただれていて、原型をとどめていないのです。私は走ってその場を去りました。あの顔、焼きただれている顔はにやっと笑っていたのです。恐くてたまらなかったものの、おばあちゃんに何かあったのかもしれないと思い、母に報告して家に一緒に行ってもらいました。しかし、母と一緒に向ったその家にはおばあさんはいませんでした。というよりも、家自体がそこにはなかったのです。

母はここにはずっと家なんてないよと言われ、これまでのことを話しましたが、私の体質を知っている母は「戦争で亡くなった人かもね」と寂しそうに空き地を眺めていました。もしかしたらそうかもしれない。だとしたら逃げてしまったことがとても悪かったなと思ったのです。

翌日からしばらくは母にその家の前を一人で通らないように送り迎えをしてもらいました。送り迎えが終っても、あの家は二度と現れることがありません。今でもあの日、逃げ出してしまったことが心残りですが、長い期間見えないものが見え続けていたことをかんがえると、今私がみているものが本当にあるのかと疑ってしまうこともあり、ぞっとします。

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