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yumyさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

「アハハハハ」薄気味悪い笑い声の正体
短編 2021/08/04 11:47 1,479view
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これは介護施設で働いていた時の話です。
寝たきりの人も多い施設なのですが、入社したときから時々、ある部屋から奇妙な笑い声が聞こえることがあったのです。

それは若い女性の甲高い笑い声。笑い声なのですが楽しそうという感じではなく、どこか狂気さえも感じられる笑い声だったのです。しかもそれは、ある男性の部屋からだけ聞こえてくるのです。
80代後半のおじいさんの部屋で、周囲には女性の部屋はありません。音を嫌う人だったのでテレビも撤去させられていて、ラジオさえもないんです。
しかもその声が聞こえるのは私だけ。他の職員は何も聞こえない、気のせいだといわれたり、怖いからそう言った発言をするのはやめろと怒られることもあったんです。

笑い声はおじいさんの部屋に入る度に薄気味悪く「アハハハハ」と聞こえるのですが一瞬のこと。入居男性も気がついていないみたいなので、私も気にしないようにしていたのですが、様子を見に行ったりするたびに「アハハハハ」と耳にまとわりついてくるんです。

しかも、その笑い声はだんだんと部屋だけではなく、入浴介助のときなども執拗に「アハハハハ」と聞こえ、日を重ねるごとに大きくなり、聞き違いなんてレベルじゃないほど大きく長く聞こえるようになっていったんです。

その人の近くに行くだけで、「アハハハハハ」「アハハハ」と聞こえてくるようになり、耳に笑い声が耳にまとわりついてきて離れません。本当にこの声が誰にも聞こえていないの?!そう思うレベルだったんです。

狂気に満ちた笑い声は、私の精神を蝕んでいきました。もうこの仕事をやめようかなと思ったとき、夜勤中におじいさんの部屋から「アハハハハ」と笑い声が聞こえてきたんです。いつもよりもはるかに大きな声。いつものように私だけに聞こえてくるのかと思っていたのですが、同じ夜勤者も「誰の声?」「何なの?!」と騒ぎ始めたんです。

私たちが様子を見に行くと、笑い声が響く中、おじいさんがベッドに座ってぼーっとしているんです。おじいさんの名前を呼ぶけど返答がありません。隣の部屋を見たり外を確認したり、女性の笑い声の正体をつかもうとしたのですが、その声は明らかにおじいさんから聞こえてくるんです。

「アハハハハ」と笑っているけど、おじいさんは無表情。何度も名前を呼んでいるのに気がついていない様子で笑い声が響いたかと思うと、ぴたっとやみ、そのままおじいさんがベッドに倒れこんだんです。夜勤者の悲鳴がするなかで、おじいさんの様子を見ると何事もなかったかのように静かに眠っています。
私たちはその後、恐怖で仮眠をとることもできずに夜勤者はみんな一緒に行動をして、業務を終えました。

おじいさんは翌朝も普通に起きてごはんを食べているんです。あれはなんだったのか。そう思っていたのですが、帰宅しても眠れずにいると職場の人から連絡があり、そのおじいさんが亡くなったと聞かされたのです。あの笑い声と関連があるのではないかと職場はもちきりになり、当時はちょっとした騒動になりました。

後日、そのおじいさんの担当をしていたケアマネがおじいさんの隠された話を聞かせてもらいました。実はそのおじいさんの娘さんが精神的に病んでいて、数年前におじいさんの目の前で焼身自殺をはかったそうです。助けようとするおじいさんの前で笑いながら燃えていき、そのまま飛び降りて亡くなったのだそう。
あの笑い声はおじいさんの娘さんのものだったのでしょうか。だとすると、おじいさんは娘さんが亡くなった後もあの笑い声を聞き続け、そして連れて行かれてしまったのでしょうか。今でも私の脳裏にあの笑い声が離れません。

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